「見送るべきではないか」「いや、次世代にツケを先送りしないためにも、あくまで上げるべきだ」など、議論百出の日本の消費税問題ですが、お隣のロシアでは来年1月から上がることが既定路線。このため、「今の内に」と、駆け込み需要での購入が増加しています。ただし、肝腎の車の価格が既に上昇しつつあり、ドライバーは悲鳴を上げているようです。明日の日本を見る思い?
売上税上昇前の「駆け込み需要」で、通年成長は13%?
まずは、オートモーティブ・ニュース・ヨーロッパの記事から(2018年10月9日付け)。
欧州ビジネス協会(Association of European Businesses=AEB)の9月調査を基にしています。それによると、売り上げは前年同月比で6.2%増加して、15万7371台となっていました。売上税(日本の消費税に相当)が来年1月から上がるため、駆け込み需要だと見なされています。
AEBは、通年での成長予想を13%だとしています。当初は10%の増加だと予想していましたので、上方修正となった格好です。
「現状の市場の状態を見ると、1月からの売上税の増税によって、AEBとしては2018年の乗用車や軽自動車は180万台の売り上げだと予想している。パーセンテージに換算すれば13%になるだろう」と、AEBの自動車製造部門の会長を務めるジョエル・シュライバー氏は分析しています。
ちなみに、9月までの売り上げは前年比で15%増の129万台となっているそうです。ただ、売上税が上がった来年以降は鈍化するだろうと予測されています。
駆け込みたいけど、価格が上昇してドライバーは悲鳴!
次に、オートモーティブ・ロジスティクスの記事から(2018年10月16日付け)。どうやら、駆け込み購入したいにもハードルが待ち受けているようですね。
それによると、ロシアではルーブルの価格が下落しています。つまり、輸入価格そのものが高くなっているのです。その上、輸入品への関税も高くするという政策が悪影響。そうなると自動車の輸入部品もまた価格が上昇するわけで、いわばダブルパンチの形で販売価格に影を落としているのだそうです。
地元の政府系新聞であるロシア・ガゼッテ紙の調査報道によると、同国でOEM製造しているフォルクスワーゲンやトヨタ、フォード、ヒュンダイ、キア、三菱自動車などの価格が上がっていたことが分かっています。最もポピュラーなモデルでは、5%から12%の上昇となっているとのことです。
なお、ロシアの自動車業界の専門家は、更なる価格上昇があるだろうと見ています。
地元のコンサルタント企業であるGKアロール社のシニア・アナリストであるアレクセイ・アントノフ氏は、2段階での上昇となると考えています。まず1度目は2019年初頭で、言うまでも無く、売上税の上昇に対応したもの。次が第二四半期だろうとしています。低価格で輸入していた自動車の部品のストックが、その頃に使い尽くされるだろうと考えられているからです。
まとめ:上昇後は20%。広範囲に影響が出るだけでなく
ちなみに、ロシアの売上税率は、現状で18%。これが1月から20%になるそうです。日本の倍ですね。庶民の生活を直撃しそうですが、アントノフ氏は、製造工程だけでなく、運送会社やディーラーシップなど、広範囲に影響が出るだろうと予測しています。
地元の報道機関の取材に対し、VTBキャピタルのシニア・アナリストであるウラジミール・ベスパロフ氏は、ルーブルの下落が9月の販売価格に大きな影響を与えていると考えていると応えています。アメリカの経済制裁によって、8月に10%近く下落していたからです。
それでも、売上そのものが増えているのは、無理を重ねてという感じでしょうか。トランプ大統領に恨みを抱いているロシア人ドライバーが多そうですね。
なお、現状での売上の上位3傑は、ロシアの国内メーカーのラダー、キア、ヒュンダイの順番になっていると、AEBはレポートしています。現状4位以下であるトヨタなどの日本勢の値上げ後の売り上げが気になりますね。
出典:オートモーティブ・ニュース・ヨーロッパ
Russia sales rise 6% ahead of VAT increase
出典:オートモーティブ・ロジスティクス
Car prices jump in Russia as fiscal pressure mounts – Automotive Logistics
出典:欧州ビジネス協会
September 2018 market increase is 6,2 %