最近、自動車業界で注目を集める存在がSUVです。昨年のある時期には、トヨタのSUV新型車「C-HR」が、月間販売台数ナンバー1を獲得するという驚きのニュースもありました。「プリウス」も抑えたわけで、「アクア」、「フィット」などのコンパクトカーよりも、SUVである「C-HR」が非常に多く売れたのです。 マツダでも、SUV「CX-8」が、予想以上のペースで売れているようです。スバルでも、2018年3月末のニューヨーク国際ショーで、SUVの新型フォレスターを発表し、大きな話題を集めています。三菱自動車でも4年ぶりの新型車がSUVの「エクリプスクロス」です。このように、最近の新型車で話題の中心になるのは、やはりSUVなのです。
世界的なSUVブーム
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日本車以外では、ジャガー、アルファロメオなど、基本的にスポーツカー色の方が強いブランドもSUVを発表しています。
更にはベントレー、マセラティ、ランボルギーニなど超高級ブランドも参入してきているのです。スポーツカーの専門メーカー・ポルシェでは既にSUVは定番的な存在です。
街を見れば、どこもかしこもSUVだらけ。世界的な人気カテゴリーとなっているのは間違いありません。では、どうしてこんなに人気があるのでしょう?
ちょっと考えれば人気になる理由もいくつか思い浮かぶかと思いますが、そうした点をここではまとめてみたいと思います。
SUVという名称
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SUVという名称は、「スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル」(Sport Utility Vehicle)の略語ですが、明確な定義というのはどうやら無いようです。それでも現在SUVと呼ばれるタイプには一定の条件があります。
まずは「ピックアップトラックの荷台部分に荷室空間(シェル)を作ったもの」です。言ってみればこれが本来の意味でのSUVということにもなるでしょう。
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現在この定義に当てはまるのは「トヨタ・ハイラックス」などでしょう。
路面からの強い衝撃を受け止める高剛性フレーム構造を採用。厳しい路面状況下でもしっかりと地面をとらえるタフなサスペンション。高張力鋼板を最適配置した強固なボディシェル構造を採用しています。
次の条件は「本格的なオフロード走行を想定した充分な地上高と、堅牢なフレーム構造設計の四輪駆動車」ということです。これはクロスカントリー車とも呼ばれます。小さいながらも高い走破性能を持つ「スズキ・ジムニー」などは、まさしくこの条件にはまると思います。
もともとはこうした条件があったわけですが、最近の主流は、車体がモノコック構造であり、いわゆるSUV車風の外観のクルマに移行してきています。セダンやコンパクトカーのボディを大きめ、高めに設計し直した「クロスオーバー」というポジションです。
熟年世代である筆者ですが、まだSUVという言葉が無かった時代の「レンジローバー」が思い出されます。ランドローバーの豪華版ですが、トヨタ・ランドクルーザーと共に「砂漠のロールスロイス」などと呼ばれていました。
この当時は当然少数派のクルマであったわけですが、今や街中で当たり前に走るような洗練されたものになってきているのです。
高い走破性
SUVは比較的大きなタイヤを使っていることが大きなポイントになっています。必然的に車体の位置は高くなり、優れた走破性能を持つことができます。
段差を乗り越える能力も車高の低いセダンに比べると高く、行動範囲が広くなるという長所があります。特にスキー、キャンプなどクルマにとって悪条件の場所に行く場合なら、間違いなくセダンよりSUVの方が適しているということになります。
クルマの車高が高くなるということは、ドライバー目線もそれに比例して高くなります。高い視点でクルマを運転すると、遠くまで見やすいですから、運転しやすく安心感にもつながります。
確かに運動性能的に高い車高は不利となりますが、同じく人気のミニバンよりもSUVの方が運動性能は上です。通常の速度ではそんなに気にならないでしょう。
実用性の高さ
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趣味性が強そうに見えるSUVですが、SUVの多くのタイプはラゲッジスペースも広くなっています。荷物がたくさん詰めますし、ステーションワゴンの代わりとしても充分に使えます。
更にミドルクラス以上のSUVともなれば、広いラゲッジスペースに三列目シートを設置したタイプもあり、6人~8人乗りも可能です。SUVの三列目は「一応何とか座れる」レベルで、ミニバンの三列目には広さは及びませんが、緊急用には役に立ちます。
三列シート車が欲しいが、ミニバンはちょっと嫌という人にもピッタリです。こうしたミニバン的に使える点も人気の要因でしょう。
車種による違いも結構ありますが、SUVの適度な着座位置の高さは乗り降りしやすいようで、年配層からも支持を得ています。
カッコいい
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「カッコいい!」。実はこれが一番の理由かもしれません。
全高、特に最低地上高の高さがあるSUVは見た目が頼もしくなっており、ベースの乗用車よりもカッコよく見えます。乗用車ベースのSUVなら、ベースのセダンより30万円程度の追加で買えますから確かに魅力的です。
何年に一度の非常に高い買い物ですから、SUVタイプを選びたくなるのも理解できます。
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写真のアクアやインプレッサの例でもこれだけ違って見えるのです。
SUVの中でもトヨタ・ランドクルーザー、ランドローバーのような本格的SUVに対する憧れ的なイメージの高さというのは「ブランド」であり、これも魅力の要素になっているでしょう。見た目がスポーティかつスタイリッシュなものも多くなっています。
改善されたSUV
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ひと昔前に挙げられていたSUVのデメリットが改善されている点も人気の要素です。
SUVの魅力というのは昔からも既に言われていたのですが、かつては、車重が重く、そのために大きなエンジンを搭載し、燃費も非常に悪いとされていました。
オンロードでのハンドリングについても、乗用車との差がかなり大きかったのです。
ところが乗用車ベースのSUVの多くなってきたので、ハンドリングや走行安定性はベースとなった乗用車にかなり近く、燃費についても、エンジン自体の進化、ハイブリッド化、クリーンディーゼル採用などによってそれほど変わらなくなってきています。
こうして弱点が減ってくると、今度はもともとあったメリットが光ってきます。SUVの現在の人気は単なるブームということだけではないようですね。
SUVは今後も人気のカテゴリーとして堅調な販売実績が続くことでしょう。
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