もはや日本では伝説とも言える存在となっている、あの「GT-R」を輩出したクルマがスカイラインです。60年以上の歴史があり、その過程では、高級ファミリーカー~小型ファミリーカー~スポーツタイプの併設~ラグジャリーカー~上級サルーン、というように、時代によってその立ち位置も変化してゆきました。現在のスカイラインは高級サルーンとなり、若者が乗るようなクルマではなくなってしまいましたが、その昔、世の多くの若者は「スカG」という呼称に大変大きな憧れを持っていたものです。非常に長い歴史を持つスカイラインですが、ここでは60年代からのルーツと共に、現在でも中古車市場で手に入る年代の「スカG」を中心にお話したいと思います。
スカイラインの生い立ち
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スカイラインの歴史は非常に古く、1957年4月にプリンス自動車(当時は富士精密工業)から初代が発売されました。かなり昔のことですから、リアルタイムでこれを知っている人は殆どいないとおもいます。
しかし、クルマ好きのためには、1962年4月に追加された「スカイライン・スポーツ」だけはお伝えしなければなりません。
これは日本初のスペシャルティカーといわれていました。つり目の4灯ヘッドライトは当時としては特徴的なデザインで、クーペとコンバーチブルの2タイプが設定されていました。ボディの殆どはイタリア職人の指導によるハンドメイドであり、当然ながら相当高価で、製造台数は60台ほどというまさに幻のクルマです。
しかし、すごく夢を感じさせてくれますよね。
2代目スカイライン
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2代目(S5型)は1963年9月に登場しました。上級市場(1,900cc以上)はグロリアにまかせるかたちで、スカイラインは、1,500ccクラスの量販車となり、直列4気筒OHVの1,500ccエンジンを搭載しました。
小型ファミリーセダンとしてモノコック構造を採用しています。そして、スカイライン2000GTのルーツの源流となったのもこの車種なのです。
それは1964年5月に行われた「第2回日本グランプリ」のGTクラスに出場するため、強力なグロリアスーパー6用の直列6気筒OHC2,000ccエンジンを積むことになり、ボディのフロント部分を200mm延長したのです。こうしてスカイライン2000GTは生まれ、まずはホモロゲーション用に100台を販売しました。
1965年2月には、正式な生産車として、フロントディスクブレーキを装備、そしてレースモデルと同等にウェーバー製のキャブを3連装して125PSを発揮したスカイライン2000GTが発売されました。
1965年9月にはシングルキャブ仕様の2000GT-Aが追加されています。既に発売されていた2000GTは2000GT-Bと命名され、GT-Aは青のエンブレム、GT-Bは赤のエンブレムがつけられたのでした。
1966年8月には、プリンス自動車が日産自動車と合併したので、車名はニッサン・プリンス・スカイラインに変更しています。2000GT-Bは現在のGT-Rの「祖先」ということになります。
3代目スカイライン
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3代目(C10型)は1968年8月に登場し、通称「ハコスカ」として非常に愛されたモデルです。
日産との合併後に初めて新規に発売されたモデルでもあり、1968年10月には直列6気筒OHC2,000ccのL20型(シングルキャブ)を搭載した2000GTが追加されています。最高出力は105PSでした。
もちろんGTはフロントノーズを延長していますが、開発当初から6気筒化を前提とした設計だったので、6気筒モデルの方がむしろバランスのいいスタイルになっています。サスペンションは、フロントは4気筒と同様にマクファーソンストラットですが、リアはセミトレーリングアームとコイルスプリングになり、4輪独立懸架となりました。
そして1969年2月にはいよいよGT-Rが登場します。
エンジンは旧プリンス系の技術陣が開発し、直列6気筒4バルブDOHCの2,000ccエンジンは驚異の160PSを発揮しました。これがまさに「元祖GT-R」ということになります。一般のGTとの外観での相違点は、拡大されたトレッドに対応させるためのリアフェンダーの特徴であるサーフィンラインが無いこと、全てのガラスが無色透明(熱線吸収タイプではない)なこと、リアデフォッガーも無く、モール類も装備されないことなどです。もう本当に走ること以外には何も装備されていません。
しかし走りのメカには徹底的にこだわり、排気系には3気筒ずつを1本にまとめたステンレス製等長エキゾ
ーストマニホールド、消音器外殻の共用以外は、テールパイプまで完全に2本分割になっています。ギアボックスは全段ポルシェ式サーボシンクロの常時噛合いギアです。サスペンションは2000GTと形式こそ同じ前ストラット、後セミトレーリングアームですが、スプリング、ダンパー、フロントスタビライザーは強化され、ブレーキではブレーキコントロールを容易にする為にわざとマスターバックを標準装備していません。
1970年10月にマイナーチェンジ、そして2ドアハードトップモデルが追加発売されました。GT-Rはツーリングカーレースにおいて通算57勝という成績を残し、これが伝説となっていったのです。
4代目スカイライン
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4代目(C110型)は1972年9月の登場で、「ケンとメリーのスカイライン」という愛称がありました。
先代同様に、セダンとハードトップにはホイールベースを延長して6気筒エンジンを搭載したGTの設定があります。しかし当時の時代背景は車体の大型化傾向ということで、スカイラインも大きく豪華になっていったのです。ファミリーカーとしては正常進化なのかもしれませんが、スポーツ車ということでは、やや鋭さが影を潜めた感じです。
1973年1月には「ハードトップ2000GT-R」も登場しましたが、レースには出場しませんでした。排出ガス規制の影響もあったわけですが、わずかに195台が市販されて終了しています。そして「GT-R」の名前はその後長期にわたって封印されます。
5代目スカイライン
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5代目(C210型)は1977年8月に登場。愛称は「ジャパン・スカイライン」です。
車体は更に長くなり、上級サルーンの雰囲気さえも漂わせています。GT系には2,000cc、直列6気筒OHCの130PSが搭載されていますが、その走りは活発とは言えないものでした。
発売当初はやはり、排出ガス規制の影響でDOHCも設定されなかったのですが、ライバルのセリカにはDOHCモデルがあり、ちょっと苦しい立場になりました。この対向策だったかどうかは不明ですが、1980年4月にターボエンジン搭載モデルが追加されました。パワーこそ145PSですが、トルクは21.0kgmと当時としてはかなり強力で、GTの名にふさわしいものとなったのです。
6代目スカイライン
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6代目(R30型)は1981年8月の登場です。
先代ではスポーツイメージが薄れそうになっていたスカイラインですが、6代目では従来の直列6気筒のGTに加えて、2,000cc、直列4気筒4バルブDOHCエンジンを搭載するRSが登場しています。150PSを発揮し、これはかなり話題になりました。
「GT-Rの再来か!」とも期待されましたが、GT-Rを名乗らなかったのは「4気筒だったから」とも伝えられています。1983年8月にマイナーチェンジされ、RSは薄型ヘッドランプにラジエーターグリルレスのデザインから「鉄仮面」と呼ばれ、存在感が大きくなりました。
7代目スカイライン
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7代目(R31型)は1985年8月に登場しましたが、車体は更に大きくなり、セドリックとも殆ど差が無いようなイメージになりました。
バリエーションは、4ドアセダン、4ドアハードトップ、ワゴンです。外観からはスポーティさがまったく感じられなくなりました。7代目のハードトップは、他のスポーツ車、例えばセリカなどと比較するのも違和感を持つほどで、比較するならマークⅡの方だったかもしれません。
ただし、エンジンは進化してGT-RのS20型以来の直列6気筒4バルブDOHCを搭載していました。しかもターボで210PSを発生、更に、4輪独立操舵システム「HICAS」も搭載していました。それでも大きく重くなった高級志向の車体は従来のスポーツ路線とは大きく異なり、結果は不評でした。
1986年5月には待望の2ドアスポーツクーペのGTSシリーズが追加されました。ピラーレスのハードトップではなく、車体の剛性アップのためにBピラー付きのクーペになっています。 ターボのタービン素材は軽量なセラミック製でターボラグの低減を狙っています。そして、時速70km以上になると、フロントエアダムから自動で出てくる「GTオートスポイラー」もオプションで設定されました。このGTSシリーズの追加を堺に、スカイラインは再びスポーツ路線へと回帰を図ることになったのです。 こうした変わり身の早さにはちょっと驚きです。
1986年5月には待望の2ドアスポーツクーペのGTSシリーズが追加されました。ピラーレスのハードトップではなく、車体の剛性アップのためにBピラー付きのクーペになっています。 ターボのタービン素材は軽量なセラミック製でターボラグの低減を狙っています。そして、時速70km以上になると、フロントエアダムから自動で出てくる「GTオートスポイラー」もオプションで設定されました。このGTSシリーズの追加を堺に、スカイラインは再びスポーツ路線へと回帰を図ることになったのです。 こうした変わり身の早さにはちょっと驚きです。
8代目スカイライン
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8代目(R32)スカイラインは1989年5月に登場。ご存知の方も多いのですが、かなり話題になったモデルです。
車体はダウンサイジングされ、2ドアスポーツクーペと4ドアハードトップスポーツセダンの2タイプで、ショートボディのスポーティーなFR駆動5ナンバー車です。サスペンションは高性能の4輪マルチリンクです。
GTシリーズには、直列6気筒2,000cc、SOHC(125PS)とDOHC24バルブ(155PS)、DOHC24バルブターボ(215PS)がラインアップされています。ATは当時まだ4速ATです。
そして1989年8月に復活を遂げたのが「GT-R」です。これはもう大騒ぎとなりました。
何しろ最新鋭の技術が「てんこ盛り」の超弩級スーパースポーツだったのです。エンジンは直列6気筒DOHC24バルブのツインターボで、楽々自主規制上限の280PS。そして、電子制御トルクスプリット式の4WDシステムが組み合わされています。もちろん5速マニュアルのみの設定で、グループAツーリングカーレースのベースモデルにもなっています。
レースデビューは1990年の全日本ツーリングカー選手権の第1戦で、GT-R(グループA仕様)は、2位の同じGT-R以外を2周以上の周回遅れにしたのです。まさに圧倒的な力の差です。この1990年の初戦からJTCカテゴリーが終了する1993年まで無敗であり、最終的には29連勝という結果を成し遂げたのです。
GT-Rの神話が再びここで起こったのです。「スカG」という愛称は、現在のシニア世代にとってはやはり特別なものとなったのです。
9代目スカイライン
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9代目R33スカイラインは1993年8月の登場です。8代目でスポーツ路線に回帰したスカイラインでしたが、なぜか再び車体は大型化し、全車3ナンバーとなりました。
居住性の向上を図った2ドアスポーツクーペと4ドアスポーツセダンです。エンジンはメインが2,500cc、DOHC、DOHCターボになっています。サスペンションは熟成域に達した4輪マルチリンクですが、2ドアクーペには電子制御アクティブLSD装着車も設定されています。
実際のところ、走りはかなりレベルが高かったのですが、やはり大型化したちょっとズングリしたスタイルがまずかったようで、7代目の時のようにちょっと地味な存在になってしまいました。
それをカバーしたのはやはりGT-Rです。何と8代目の車体が継続販売されていたのです。直列6気筒DOHC 2,600ccエンジン、大型インタークーラー、6連スロットルチャンバー、ツインセラミックターボ、プレス型ストレートマフラーなどのテクノロジーが凝縮されています。マイナーチェンジでは、クッラチの踏力軽減を実現したプル式クラッチが採用され、ミッションもシンクロメッシュの改良で信頼性の向上、17インチアルミホイール+タイヤ、ブレンボ社製ブレーキシステム、アテーサE-TSのセッティングを変えた「GT-R Vスペック」が追加されています。
さて9代目のGT-Rですが、これは1995年1月に登場しました。エンジンはR32型と同じですが、コンピュータ制御の見直しなどでトルクアップが図られています。Vスペックには「アテーサE-TSプロ」と呼ばれるフルタイム4WDシステムが採用れています。ただし重量も増加し、8代目のGT-Rのようなカリスマ性はもう無くなっていました。
10代目スカイライン
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10代目R34スカイラインは1998年5月に登場です。
大型化した9代目の反省からか、R34スカイラインは先々代R32と先代R33の中間程度のサイズになっています。あえて言えば企画が迷走していたわけですが、発売されると、抜群の操縦安定性、動力性能から高い評価を得ています。
駆動方式はもちろんFRで、トルクスプリット4WDのアテーサE-TSも用意されました。搭載エンジンはすべて直6で、2,500ccターボは280PSを達成しています。自然吸気は200PSです。
サスペンションは4輪マルチリンク、2,500ccLターボ車には電動スーパーHICASが標準装備となっています。デュアルエアバッグ、ロードリミッター&プリテンショナー付きシートベルト、ブレーキアシスト、ABSも安全機構として全車に装備しています。
ファン待望のGT-Rは1999年1月に登場し
ています。モータースポーツでの偉大な戦績を持つGT-Rは、もはや単なるスカイラインの1モデルということではなく、スーパーGTカーという独立した存在になっていました。
GT-R専用のエンジンに、4輪マルチリンクサス+アテーサE-TSの4WDシステムシステムはGT-Rの代名詞です。
10代目では更に、分割調整式リヤスポイラー、カーボン製アンダーパネル(オプション)など、エアロのチューンも高レベルで行われています。 レースではGT500クラスにおいて、トヨタ・スープラと激闘を演じましたが、スカイラインGT-RによるJGTC参戦は2003年が最後となり、以後はフェアレディZに移行していきました。「スカイラインGT-R」という呼称もR34で最後です。
10代目では更に、分割調整式リヤスポイラー、カーボン製アンダーパネル(オプション)など、エアロのチューンも高レベルで行われています。 レースではGT500クラスにおいて、トヨタ・スープラと激闘を演じましたが、スカイラインGT-RによるJGTC参戦は2003年が最後となり、以後はフェアレディZに移行していきました。「スカイラインGT-R」という呼称もR34で最後です。
11代目スカイライン
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11代目V35スカイラインは2001年6月に登場しましたが、先代とはまったく別のクルマになりました。ここから型式が「R」から「V」に変っていますが、それはエンジンが直6からV6になったからです。
直噴V6DOHCの3,000cc、2,500ccの2ユニットで、電子制御式連続可変バルブタイミングコントロール機構をそなえています。車体はかなり大きくなり、名称は「300GT・250GT」です。言ってみれば「スカG」だけになったのですが、走りのクルマではなく、上級サルーンとしてのGTになったのです。
プレミアムスポーツクーペは2003年2月に登場。GT-Rに関してはR34型が継続販売されています。
12代目スカイライン
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12代目V36スカイラインは2006年11月登場。新世代FR-Lプラットフォームを採用しています。
新開発V6エンジンを搭載し、吸排気システムやサスペンションなども新しくなっています。スタイルはややシャープになりました。ミッションは全車5速ATとなり、パドルシフトのみでマニュアルシフトモードにできる制御が採用されています。
スカイラインクーペは2007年10月登場で、エンジンは3,700ccとなった新機構VVELを採用し、333PSを発揮しています。日産独自のシステム「4輪アクティブステア」も採用されています。
13代目スカイライン
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13代目のV37スカイラインが現行車です。
2014年2月に登場、セダンは伝統的なスポーツセダンタイプですが、クーペの方は意識してワイド&ローのスタイルになっています。全車V型6気筒DOHCですが、ハイブリッドも登場して、システム最高出力は364PSに達しています。
2014年6月には2,000ccの「200GT」が久し振りに登場しています。最近流行のエンジンのダウンサイズということで、ターボチャージャー付ながら燃費性能の向上を図っています。最高出力は211PSで、自然吸気2,500ccエンジンに匹敵する加速性能を発揮しています。
スカGというクルマ
11代目からスカイラインGT-Rは消滅しましたが、「GT-R」という独立車種が2007年12月から登場しています。
新開発プレミアムミッドシップパッケージ、3,800cc、V6ツインターボエンジン(480PS)、GR6型デュアルクラッチトランスミッション採用など、もはや完全にスーパーカーへと変貌しました。もちろん素晴らしい性能を誇るのですが、ここで書いてきたスカGとはちょっと違うことがわかると思います。
スカGはいつの時代も、よく言えば「挑戦的」で、逆に悪く言えば「やや未完成」でしたが、それでも憎めない、いや愛すべき存在でした。現在、往年のスカGを味わおうというなら、現実的には保存状態のいい8代目R32あたりが限界で、10代目R34が狙い目になるかもしれません。
スカイラインGT-Rは完全にプレミア価格です。R32のGTS-tタイプMならまだ中古車市場に出ていますし、価格も現実的です。直6のR34もちょっとプレミア価格になっていますが、25GT-Xターボなら200万円以下で手に入ると思います。
検討するならそろそろラストチャンスかもしれませんよ。
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