トランプ大統領の虚しき遠吠え? アメリカの自動車用リチウムイオン・バッテリー製造事情がヤバすぎ!

何かと中国を貿易競争で目の敵にしているアメリカのトランプ大統領。その煽りを受け、自動車業界に数多くの被害が出そうだという指摘は、ここでも何度か行ってきましたが、どうやら旗色が悪いどころではないという話が出てきました。世界の自動車用リチウムイオンバッテリーの製造に占める中国のシェアは、今や50%を超えており、アメリカにもメーカーは8社あるものの、純然たるアメリカ資本の企業は1社だけなのですって。しかも、要所要所を中国に抑えられているし…。

全米自動車バッテリー協会が「セキュリティ面で問題」と警告

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WARDSAUTOという自動車業界情報サイトが報じています(2018年10月2日付け)。 アメリカには全米自動車バッテリー協会(National Alliance of Transportation Batteries =NATTBatt)という業界団体があります。そのNATTBattの執行役員を務めるジム・グリーンバーガー氏は「経済セキュリティ上、問題がある」と警告しています。アメリカ国内のリチウム電池の製造能力が、弱すぎるからだとしています。 そもそも、アメリカ国内に製造工場は8つだけ。その内、外国のファンドが関与していない工場(つまり外国に振り回されない)は、インディアナポリスに本社があるEnerDel社のみ。しかも、製造量たるや微々たるものだそうですから、お寒い限りですね。 「10年近く前にNATTBattを始めた際、『バッテリーを作る人が、最後は車を作る』と言っていた。つまり…これはアメリカの経済のセキュリティの問題になってくるのだ」

中国の有力メーカー、CTALが独に工場。背中が遠のくばかり…

その上、中国は世界のリチウムイオンバッテリーの製造能力のシェアを50%を占めています。ここまででも苦境ですが、更なる懸念材料が。中国の有力リチウム電池メーカーのCTALが、ドイツに工場を建設すると7月に発表しています。14ギガワットの工場になるそうです。上記のEnerDel社は20メガワット。話にならない差ですね。 ちなみに、アメリカ国外の企業によるリチウムイオン電池工場は、テスラとパナソニックの工場(ネバダ州)や、日立オートモティブシステムズ(ケンタッキー州)もあります。この他、ビッグスリー2社(ゼネラル・モーターズやフォード)向けに製造しているLG化学の現地法人(ミシガン州)も存在します。 アイルランド系のジョンソン・コントロールズ・パワー・ソリューションズ(同)もあります。まぁここまでは一応、アメリカに敵対していない国です。 ややこしいのは日産自動車(テネシー州)の現地法人。使っているテクノロジーは日本のものですが、上海に本社があるEnvision Energyの子会社になりそうなのだそうです。 また、中国の万向集団という企業グループの傘下のA123バッテリーシステムは、ミシガン州に2つの工場を保有。バス向けに作っているとのことです。 つまり、公共交通機関を抑えられているに等しい。そういう現状に背を向けて喧嘩を売っているのですから、無茶ですね。
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まとめ:「投資しようとしないアメリカにも問題」。逆転策は

グリーンバーガー氏に言わせると、このような状況でもリチウム電池製造に投資しようとする動きがアメリカ国内に存在していないのだそうです。 一方の中国は、向こう5年で500億ドルを投じて電気自動車社会を作り上げようとしています。それに対し、アメリカ国内の関連投資は、オバマ政権の景気刺激策の20億ドル。ここでも、話にならない差ですね。 では、逆転策はあるのか? 「次世代のバッテリー技術の開発か、非バッテリー技術の研究開発を下に入れるべきだろう」(グリーンバーガー氏)。ご本人が可能性として有り得るのは、亜鉛もしくは固形状のリチウムか、燃料電池など「リチウムイオン電池に置き換わるものに確実に投資していくこと」ではないかとしています。 勝てそうにない以上、別のステージで勝負していくとなりましょうか?しかし、その場合のスケジュール感が、どうなっていくかですよね。見つからなかった場合、どうするんでしょうか? あれこれ考えると、適当なところで拳を振り下ろした方が良い気が…。
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