フランスの大都市で「渋滞税」徴収の動き。肝心の自治体は迷走中?

フランス語は皆目知らないのですけど、「間が悪い」に該当する言葉があるのでしょうか? そう形容したくなるような、間の悪い政策が導入されようとしています。ガソリン価格が高騰しっぱなしの中、「街の大気汚染をロンドン並みに下げたい。そのためには渋滞とアイドリングを一掃せねば」と、運輸大臣が構想中なのが「渋滞税の恒久化」。ドライバーの反発は必至?

パリなどの大都市の中心部への乗り入れに最大20ユーロ

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ザ・ローカルfrというフランス情報サイトが報じています(2018年10月18日付け)。この渋滞税、英語ではcongestion chargeと表記しますが、またの名を通行料。欧州では、ロンドン中心部の特定のエリア内に、ある時間帯に車を乗り入れたら課金されるシステムとして導入されています。 これと同じ制度を、フランスの各都市に導入しようという計画があるのです。エリザベス・ボルネ運輸相は、導入によって大気汚染の度合いをダウンさせることができるだろうとしています。 「現状は3年間の時限立法であり、実験的な色彩が濃い。これを改正せねばならない」と、ボルネ運輸相は1月の時点で語っています。 政治専門誌のコンテクステの取材に対し、かねて構想していた渋滞税の導入を実現させたいと運輸相は回答しています。 運輸相が強気なのには理由があります。ロンドンだけでなく、周辺の各国で同種の税金を徴収しているからです。いずれも、車両が街に入ると同時に徴収されるようになっています。 大都市へ入る場合は20ユーロ、中小の都市には10ユーロというのが税額だとのことです。ちなみに、中小の規模ですが、10万人以上が目安とされています。 一方、徴収を決定する権限は地方自治体に与えられており、どこで徴収するかや、期間や状況について決められるとしています。 また、レートについては、出入りの回数などを考慮して柔軟性を持たせ、自治体の決断いかんでは無料になる場合もあるとのことです。 徴収手段ですが、固定したポイントまたは移動ポイントを設置して当たりたいとしています。

「嫌々ながら支払う」のに、他ならぬパリ市長も消極的

アンヌ・イダルゴ・パリ市長

アンヌ・イダルゴ・パリ市長

なお、原文ではare coughing up the chargeとありますが、cough upという言い回しには「嫌々ながら払う」との意味合いがあります。記者の思いが籠もっている感じですね。 さて、この法律の恒久化ですが、大気汚染対策とセットになるだろうとされています。既に排気ガスの酷い車両については、都市部で運転規制が敷かれていますが、そうした措置と一体化するのではないかと見られています。 フランスでは、20都市(パリ及び郊外も含めたグレーター・パリ、リヨン、グルーノーブル、マルセイユなど)などで、2020年までに厳しい交通政策が採られるものと考えられています。 このように、主旨は立派なのですが、フランスのドライバーの間では反発心が生まれています。例えば「自動車無しで生きていけない人がいるのは周知の事実だ。故に、この政策は、料金を支払う手段を持ち、安全に移動し続けることが出来るドライバーと、渋滞税の支払いが多い(生活の苦しい)ドライバーとの二極化を生むだけでしかない」と、フランスの4000万ドライバー協会の代表を務めるピエール・シャッセレー氏は怒ってます。 興味深いのは、パリ市長が渋滞税導入に消極的な姿勢を示していることでしょう。街で初めての女性市長となったアンヌ・イダルゴ氏は、昨年10月時点で反対したいと示唆していました。ただ、その後は「渋滞税の導入を急ぐ気はない。少額で家計を圧迫さえしなければ・・・」と、やや意見を修正しています。 なお、トゥールーズ市は完全に導入に反対しているものの、マルセイユ市は渋滞税を完全に排除していません。リヨン市は住民への課税に反対していますが、外からの訪問者から徴収する可能性は否定していません。

まとめ:何とは無しに、息苦しさを感じさせる交通政策

なお、フランスでは現在、ディーゼルやガソリンなど車種や大きさ、製造年別にステッカーを貼らせて分類させ、排気ガスの状況を監視しようとしています。無論、外国人も従わねばならず、英語とスペイン語、ドイツ語などで注意喚起しております(Urban Access Regulationsを参照のこと)。ちなみに、このステッカーは有料での購入。何とは無しに、息苦しさを感じさせる交通政策ですね。その上、今度は渋滞税です。電気自動車の料金が高いことを思うと、ドライバーの怒りを買いそうな気がするのですが・・・。 出典:
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