表は、日本自動車販売協会連合会発表による、昨年4月から今年3月末までの1年間の車種別販売台数です。軽自動車を除くベスト20というわけですが、ここでは売れているクルマを一部ピックアップして再検証しようと思います。
1位、トヨタ・プリウス
via toyota.jp
まず順位表を見てちょっと驚くのは、TOP10にはすべてハイブリッドorEパワーが備わっているという事です。通常のエンジンだけの車種はありません。これが時代の流れなのでしょう。
そうした中で、ハイブリッド車の草分け的存在であるプリウスはやはり売れています。現行車の空力重視のデザインには賛否両論あるようですが、JC08モード燃費が37.0km/Lという抜群の低燃費であり、機能的にも熟成されていますから、人気があるのは当然ということになるでしょう。
全長4,540mm、全幅1,760mm、全高1,470mmというサイズは扱いやすく、普段の足として何ら不足はありません。先代のプリウスでは弱点と言われていたのが乗り心地ですが、現行車ではかなり改善されています。
インテリアの質もかなり見直されています。すっかりお馴染みとなったセンターメーターですが、モニターにはいろいろな情報がカラーでデジタル表示されます。燃費計、ハイブリッドシステムの状況など、自然とエコ運転をするようになるかもしれません。
斜め前、斜め後ろの視界も先代より着実に改善されています。最先端の装備についてはAグレード以上で標準装備されています。プラグインハイブリッドモデルである、「プリウスPHV」もあります。
100Vと200Vの普通充電/急速充電インレットが完備され、急速充電なら約80%充電を約20分で済ませます。自宅に急速充電機能が無い場合でも一般回路で100V/6A充電ができます。
こうして見るとプリウスには弱点らしい弱点は無いのですが、あえて言えば個性的なエクステリアでしょう。こればかりは各人の好みですから仕方ないでしょう。
また、乗車するのが2人乗り程度の人なら、よりコンパクトで安価なアクアという選択肢もあるでしょう。
2位、日産・ノート
2位は日産・ノートです。以前はこれ程までの人気車ではなかったのですが、「e-POWER」の登場以来快進撃を続けています。「e-POWER」であっても価格は200万円以下から揃っており、まさしく大人気の車種になりました。
充電状況を気にせずにどこまでも走れるという、電気自動車の新しいメカニズムであり、エンジンは発電に専念して、モーターだけで走行します。
モーターの最大のメリットは、発進時から一気に最大トルクを発生するという点で、モーター駆動だからこその優れた瞬発力があります。これは純粋な電気自動車と同様の加速です。最大トルクの25.9kgf・mは何と0~3008rpmで発生します。まさに全域最大トルクなのです。
このシステムは走行シーンに併せて最適に自動制御(3つの走行モード)され、市街地や高速道路でもレスポンスは良く、俊敏な走りが可能です。1,200ccのエンジンは発電専用です。JC08モード燃費は37.2km/Lということで、プリウスさえも上回っています。
今年の1~3月はノートが販売台数1位なのです。大容量のバッテリーが必要ないので前席シート下にバッテリーは納まっており、室内空間に影響を与えていないのも大きなメリットでしょう。車体サイズはコンパクトな5ナンバーで取り回しは非常に優れています。
日産は相当な「お宝メカ」も持つことになったわけです。また通常1,200ccエンジン車も、JC08モード燃費は26.2km/Lとかなり優れています。
4位、トヨタ・CH-R
via toyota.jp
SUVで一番売れているのがトヨタ・CH-Rです。何より開発者自身が「まずデザインありきで作った」といっている程、強烈にデザインコンシャスなクルマです。
同クラスで2014年~2016年の間、SUV販売台数ナンバーワンのホンダ・ヴェゼルをライバルとして、更に上をいくとがったデザインを目指したというのがはっきりわかります。
プラットフォームは、現行プリウスで初採用された「TNGA」で、サスペンションは、フロントに新開発されたマクファーソンストラット式を採用、リヤはダブルウィッシュボーン式で、ザックス社のSACHSアブソーバーも標準装備されています。
デザインコンシャスとは言っても、そのつくりに隙は無く、高いボディ剛性を誇り、プリウスではゴム製であるブッシュも金属製に変更されて、ハンドリングの向上を図っています。エンジンは1,800ccハイブリッド、1,200ccターボというラインナップです。
1,800ccハイブリッド2WD車のJC08モード燃費は30.2km/Lで、かなり優れた数値です。値段も手頃なので、人気車になるのはある意味当然です。
5位フィットと6位フリード
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5位と6位にホンダ車のフィットとフリードが入っています。この2車も今やハイブリッドが主力です。シャトルやヴェゼルも兄弟車となります。
現行フィットは2013年9月に登場ということで既に約5年が経過し、新鮮味が薄れていますが、大健闘と言ってもいいでしょう。初代から続いているセンタータンクレイアウトを継承し、室内空間、パッケージの自由度を最大限に高めた設計は相変わらず高く評価されています。
ハイブリッド技術に関しては、どうしてもトヨタに追いつけない感があるのですが、これがホンダの最大の課題でしょう。日産の「e-POWER」も出てきたので、うかうかしていられない状況です。
1,500ccエンジン+モーターというフィットハイブリッドのJC08モード燃費は34.0km/L、フリードハイブリッドのJC08モード燃費は27.2km/Lとなっています。
ただし両車ともにノーマルガソリン車にも値頃感があって一定の支持があり、この順位を勝ち取っているのはないかと思います。安全機能である「Honda SENSING」も人気の要因になっているでしょう。
7位、トヨタ・ヴォクシー
via toyota.jp
7位はワンボックスカーであるトヨタ・ヴォクシーです。つまりワンボックスカーでは一番売れているということになります。しかし最近「セレナ e power」が登場しましたので、今後はどうなるか不透明な状況です。
5ナンバークラスのワンボックスはファミリーには人気でライバルも多いのですが、ヴォクシーの場合はズバリそのワイルドなデザインが人気になっていると思います。メカニズムが共通のノア(16位)よりも売れているのが何よりの根拠です。
ちなみにトヨタの場合、兄弟車であるノア、エスクワイアも加えて販売台数を見れば他社を圧倒しているわけで、業績としての優位性は揺るぎません。
車内の広さなどはこのタイプの特性上、何ら不満は出てこないでしょう。ハイブリッドの場合は1,800cc、99PSのエンジンと82PSのモーターの組み合わせで、JC08モード燃費はJC08モード燃費は23.8km/Lまで伸びます。重量は約1,500kgもありますが、さすがの高燃費です。
ただし、「セレナ e power」は26.2km/Lということで更に上をいっています。今年に入ってからの販売台数では既に逆転されています。トヨタが今後どういう対策をしてくるのかが気になりますね。
8位、トヨタ・シエンタ
via toyota.jp
8位はコンパクトクラスのミニバンであるトヨタ・シエンタです。現在は2代目ですが、2015年7月に登場した際は非常に個性の強いデザインで周囲をあっと言わせました。
5ナンバー枠内のサイズを維持し、「リダクション機構付THSII」搭載のハイブリッドが新設され、これにより、ミニバンでトップクラスとなるJC08モード燃費27.2km/Lを実現、これはフリードハイブリッドと同数値です。
1,500ccエンジン+モーターという構成も同じで、まさにフリードとはライバル関係にあります。販売台数では若干負けているのですが、フリードの方がデザインに「あく」が無いからかもしれません。
このクラスのクルマはいわゆる「クルマ好き」が多く買うわけではありませんし、曲線を多用した外観は保守層からするとミニバンのイメージとはちょっと違うのかもしれません。インストゥルパネルも外観に準じた個性的な造形です。
それでも年間TOP10に入っているのですから人気車種となっていることは間違いありません。
10位、日産・セレナ
10位は日産・セレナです。現在は5代目となります。1991年から販売されているセレナですが、従来はどちらかと言うとミドルクラスミニバンの中ではやや地味な存在でした。それが今や注目の人気車へと様変わりしてきています。
もともと「2016-2017 日本カー・オブ・ザ・イヤー」イノベーション部門賞を獲得するほど基本が優れたセレナですが、エンジンはマイルドハイブリッドまでだったので、燃費競争に関してはライバル達の後塵を拝していたのです。
しかし、今年の3月から待望の「e-POWER」がラインナップに加わり、弱点はなくなりました。以後は常に販売台数TOP5に入る程の安定した人気を誇っています。ノートとセレナ、この2台の「e-POWER」で日産はかなり販売台数を伸ばすかも知れませんね。
1,200ccの発電専用エンジンは同じですが、モーターの最大トルクはノートの25.9kgf・mを上回り、32.6kgf・mを発揮します。
もちろんノーターのメリットである全域最大トルクなので、ミド
ルクラスワンボックスでありながら走りはまったく問題ありません。JC08モード燃費は26.2km/Lまで伸び、このクラスで最高です。
TOP20の概要
via toyota.jp
と、ここまで書いてきたように、販売台数TOP10は、すべての車種にハイブリッドorEパワーが備わっています。では、TOP20まで範囲を広げてみるとどうでしょうか?
やはりその中でもハイブリッド系が多く、普通のエンジン車では1,000ccエンジンのトヨタのルーミー、タンク、パッソとスバル・インプレッサということになります。ルーミー、タンクは姉妹車です。
ルーミーはミニマムサイズのミニバンで、1,500ccクラス相当のトルクを広域で発揮する、低燃費型ターボエンジンをラインナップしています。ターボ車でありながら、JC08モード燃費は21.8km/Lを誇り、価格は200万円以下ですから、確かにお買い得感があります。
自然吸気エンジン車なら140万円台からあり、言ってみればライバルは軽のミニバンということになるでしょう。
軽量2ボックスコンパクトのパッソなら、自然吸気エンジン車JC08モード燃費が28.0km/Lとハイブリッド車並で、価格も110万円台からあります。
と言うことは、こうした経済性やお買い得感がないと、ノーマルエンジン車ではTOP20には簡単に入れないというのが現在の状況と考えられます。
燃費性能、安全運転機能、この2点は今後更に重視されていくことになるでしょう。相変わらず軽自動車が非常に売れていますが、さて、来年はどのように勢力分布は変っていくのでしょうか。
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