日本では、よほどのクルマ好き以外は「ランチア」の名前を耳にしたことがないかもしれません。確かに最近はクライスラーと統合した上にブランドも縮小され、活気を失ってしまいましたが、かつては先進技術やデザインの美しさにおいては類を見ないメーカーでした。
ランチアとは?
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ランチアは1906年、ヴィンチェンツォ・ランチアにより設立された自動車メーカーです。
一時期はフィアットの契約ドライバーどして活躍し、その後は研究開発部門の仕事に就いていましたが、それに飽き足らずに自分で会社を興し、次々と先進的なクルマを世に送り出しました。
モノコックボディ、V型エンジン、独立式サスペンション、5速トランスミッション、風洞実験を用いたボディーデザインは今でこそごく当たり前のものですが、実はこれらを量産車で採用したのはランチアが初めてです。
ヴィンチェンツォが亡くなり、息子のジャンニ・ランチアが会社を継ぐと、ランチアは更にスポーツイメージを高めていきます。
グラントゥーリズモの草分けとなった「アウレリアGT」等をミッレミリア、タルガ・フローリオ、ルマンなどのレースに出場させ、レースにおけるランチアの存在感を高めていきました。
しかしこのような技術偏重型の経営のため財政状況は思わしくなかったようで、1955年にランチアは倒産し、実業家のカルロ・ペゼンティに買収されてしまいます。
それでもランチアの伝統は受け継がれ、フルヴィアやフラミニアなどの名車が誕生しています。
しかしペゼンティは収益性の低さも踏襲してしまい、1969年にはフィアットに売却され、フィアットにおける高級車部門という位置付けに収まりました。
その後、1980年代からのラリーでの目覚ましい活躍は、エンスー諸賢の知る所です。
クライスラーとの統合を経て、現在ランチアはFCAにおけるブランドの一つという位置付けになり、イタリア国内専売ブランドとなってしまいました。
イプシロン一車種をイタリア国内で販売しているだけという、実にさみしい現状ですが、いつかまた砂塵を巻き上げて豪快にドリフトを披露するランチア車の雄姿を見たいものです。
ランチア デルタ
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セガラリーでこのクルマの存在を知った方々も多い事でしょう。筆者もその一人です。
デルタはもとからホットハッチとして設計されたわけではなく、「イタリア版のVWゴルフ」といった性格のクルマでした。
しかしさすがはイタリアンといったところで、ただのファミリーカーとして作るのではなく、アルカンターラ素材を内装に用いるなどし、小さな高級車としての趣きを持たせています。
無骨な2ボックスデザインかと思いきや、思い切り寝かされたCピラーが印象的ですね。
ラインナップの中で注目すべきはやはりターボモデルでしょう。
特に印象的なのは、1992年に設定された「HFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ」です。
210psを発揮する2L4気筒ターボエンジン、張り出したブリスターフェンダーに目が行きがちですが、ブッシュのピロボール化、5穴ハブの採用、角度調整可能なリアスポイラーの搭載など、かなり走りに振ったモデルです。
ランチア ストラトス
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マルチェロ・ガンディーニがデザインしたこのクルマの目的はただ一つ、ラリーで勝つことのみでした。
フェラーリ・ディーノと同じ2.4LのV6エンジンをミッドシップに搭載した2シーターで、ワイドトレッド&ショートホイールベースが特徴のクルマです。
WRCでの1974年のデビューから数年間は文字通り無敵で、あまりにストラトスが速すぎ、レギュレーションが変更される程でした。
ロードバージョンは「ストラトスHFストラダーレ」という名前で販売されていましたが、実用性が低く、またオイルショックなどの背景によりスポーツカーの需要が低迷していたこともあり、世に出たのは約500台だけでした。
現在、オリジナルには文字通り天文学的な値段が付いており、入手するのは実に困難です。
ランチア テーマ
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これはごく普通の2LクラスのFFのセダンに見えますが、事実その通りです。
ですが、フェラーリのV8を搭載したモデルがあるとすればどうでしょう?
ランチアテーマは1984年にデビューしたミドルサイズセダンで、サーブ9000やフィアットクロマ、アルフォロメオ164と車台を共有するモデルでした。
1.2t少々の軽量スポーツセダンのテーマですが、1986年のトリノショーでとんでもないモデルが発表されます。
「8.32」というグレードで、これにはフェラーリ308クアトロバルボーレに搭載されていた3LのV8エンジンをインジェクション化して搭載していました。
初代モデルの出力は215ps/6,750rpm、29.0kg-m/4,500rpmと、なかなかのパワーを発揮していました。おそらくこれは、BMWのM3に対するランチアの答えだったのでしょう。
”フェラーリのV8を搭載している”という事はクルマ好きにとって何事にも代えがたい事実です。例えそれが、64:46というアンバランスな重量配分のセダンだったとしても。
これこそ本当の、羊の皮を被った狼ですね。
まとめ
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ランチアの沿革と、フィアット傘下になってからの名車を紹介しました。
ランチアのスポーツモデルは、控えめに言ってぶっ飛んだクルマばかりです。
一体どうすれば、CセグメントのFFセダンにフェラーリのV8積んでみようなんて思いつくのでしょうか。
ランチアテーマ8.32の企画会議はおそらく、会議室ではなくレストランか、或いはその2軒目に行ったバーで行われたのでしょう。 客観的に見ると馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、クルマ好きはこういうのが大好きです。 いつかまた、ランチアがこのようなクルマを復活させ、世界中のクルマ好きをワクワクさせる日が来ることを願ってやみません。
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一体どうすれば、CセグメントのFFセダンにフェラーリのV8積んでみようなんて思いつくのでしょうか。
ランチアテーマ8.32の企画会議はおそらく、会議室ではなくレストランか、或いはその2軒目に行ったバーで行われたのでしょう。 客観的に見ると馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、クルマ好きはこういうのが大好きです。 いつかまた、ランチアがこのようなクルマを復活させ、世界中のクルマ好きをワクワクさせる日が来ることを願ってやみません。