かねてから電動トラックに力を入れていたスウェーデンのボルボが、何ともニッチな市場で勝負に出ました。ゴミ収集車を1年未満で開発。このほど、ドイツ北部で実際に走る事となったのだそうです。背景には、合理的な経営判断がありました。
二酸化炭素を出さず、静かに収集可能。渋滞緩和も
YouTubeの同社の公式チャンネルより
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エレクトレックというトラック情報サイトの記事を紹介してみましょう(2018年5月9日付け)。
まず、今年5月に相次いで3つの電動トラックの車種を発表。その末尾を飾るのが、この電動ゴミ収集車だったそうです。正式には「ボルボFEエレクトリック」という名称で、総重量27トンまでの荷物に対応。複数のバッテリーを搭載し、最大で300キロまで走行可能だとしています。
「ボルボFEエレクトリックによって、都市部で運用する電動トラックが包括的な範囲で対応可能となった他、電気による運送ソリューションに於いて総合的なオファーをしていきたい弊社にとって、新たなる戦略ステップとなるだろう」と、同社は発表していました。都市部での大気汚染や騒音を改善し、早朝や深夜で排気ガスを出さずに、静かに収集出来るようになるので、昼間の渋滞の緩和にも繋がるだろうとしています。
排気ガスの削減については、同社だけでなく、ゴミ収集サービスを行っているシュタッドトライヌング・ハンブルグ社のCEOであるルディガー・シエー氏も同意見。「弊社が現在運用している300台のゴミ収集車は、概算で年間313キログラム分の二酸化炭素を排出している。8時間から10時間も走行可能なバッテリーを搭載したゴミ収集車の登場は、革命的なテクノロジーだ」と歓迎の姿勢を見せています。
ちなみに、充電には低電力と高電力での2種類があり、前者は10時間、後者は1時間半で満タンになるそうです。
有望だが難しい技術が必要な市場で、着実な第一歩
一方、ブルームバーグによると、実際にハンブルグでボルボの電動ゴミ収集車がお目見えするそうです(2018年12月7日付け)。
トラックのメーカーとしては、ダイムラーABやスウェーデンのスカニア、テスラなども名乗りを開けています。ボルボのCEOを務めるマルティン・ルントステッド氏は、「急加速するシフトの始まりを見ているのだ」と、興奮気味にインタビューに答えています。
電気自動車の中でも、一般乗用車以上に技術上の難しさがあるのが電動トラックだとされています。重い荷物を運びますし、その上、長距離輸送の場合があります。しかも、短時間の充電が求められるからです。
そこでボルボが目指したのが、都市部で比較的軽い荷物を扱うトラック。それがゴミ収集車という訳です。考えて見れば、特大の粗大ゴミならともかく、収集員がゴミ集積場から手で掴んで後部に放り込む程度の重量ですから、それほど重くないはずですよね。それに、一台当たりの走行距離数だって、短い。着眼点としては素晴らしい。ルントステッド氏も、向こう5年で、都市部で使われるトラックの25パーセント以上が電動になるだろうと予測しています。
また、ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスによると、パッケージ配送などに使われる電動自動車の運用コストは急速に低下しつつあり、2025年までには最も安価な選択肢になるだろうとの事です。この他、中型の電動トラックはディーゼルトラックよりも安くなるだろうとされているのが2025年だとされています。
つまり、諸課題はありますが、市場的には有望となりましょう。あのテスラも、500マイルを走行できる大型トラックのテストを行っていますし、2019年には配達が可能になるだろうと言われています。ただ、ダイムラーのトラック部門のトップを務めるマルティン・ダウム氏は今のバッテリーでは無理ではないのかと懐疑的です。これに対して、テスラのイーロン・マスク氏は、業績発表の席上で「ダウム氏を知っているけど、物理学には詳しくない人だ。私は大学で学んだし、ディスカッションしたいよ」と、挑発的な返答をしていました。どちらが正しいかは、やがて時が答えてくれるのでしょうね。
まとめ:先行ライバルが複数社。勝つのはどこだ?
なお、くだんのゴミ収集車ですが、10トンから15トンのゴミの積載が可能。これはディーゼルのゴミ収集車に比べ、やや少ないのだそうです。一方、走行距離は200キロ。この方面ではダイムラー・ふそうの3.5トンのeCanterという電気ゴミ収集車を6都市で採用されており、競争となるだろうとされています。また、中国のBYDも、自国とブラジルで電動ゴミ収集車が採用されたと発表していますので、こちらとも競争となるでしょう。
最終的に、どこが笑うかが注目ですね。
出典:
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