ペットの車内熱中症死の防止へ米ペンシルバニア州が関連法を強化

夏場の悲しい事故の定番と言えば、海での水難と、車の中での幼子の熱中症死となりましょうか。そうした悲劇を防止しようと、アメリカのペンシルバニア州で、先日法改正がされました。違反ドライバーには、車がダメージを受けても文句は言えなくなりました。同時に、厳罰化の方向を示しているのは、この州だけではありません・・・。

警察官らに、放置されたペットを助ける権限を付与

熱中症の危険性。車の中に閉じ込められた犬。

熱中症の危険性。車の中に閉じ込められた犬。

CBSテレビのフィラデルフィア局の報道を紹介してみましょう(2018年10月24日付け)。 法律名はThe Motor Vehicle Extreme Heat Protection Act。拙く訳すと「自動車酷暑防止法」ぐらいになりましょうか。同日付でトム・ウルフ知事が署名し、成立したそうです。 極度に暑くなっている車両に取り残されている可哀想な動物を助け出す権限を、警察官に新たに付与したというのが法律の主旨。つまり、窓ガラスを叩き割ったりして助け出してOKとなった訳です。同時に、そうされてもドライバーは文句を言えなくなったとなります。 以下、具体的な項目は次の通りです。 ・警察官らは、ドライバーが乗っていない車両の中の犬や猫に切迫した危険が生じていると判断した場合、車の持ち主を捜索後に助け出せる(つまり、ドライバーを捜して見つからない場合は、窓ガラスをパリーン)。
・そうしたペットを助け出した警察官は、無人車両のオーナーに対して、執行した警察官の名前と、当該のペットが保護されている場所をメモに残しておかねばならない。
・こうした車中への置き去りをネグレクト行為として、新たに定義し直す。即ち、ペットの健康と幸福を危険に晒すようなやり方で、車両に置いたままの駐車を禁止する。
・新しい法律によって、こうした救出行為をした際に生じた車両のダメージを賠償する責任を、当該の警察官から免除するものとする。 幼子並みの厳しさを、ペットにも適用するというわけですね。ちなみに、ペンシルバニア州では動物を保護せねばならないような悲しい事故が増加しているそうで、知事にとって2つめの法律へのサインとなったそうです。 ちなみに、寒くなっての季節で成立させたのには理由があります。ペンシルバニア州では、30年前に動物保護を謳った州法を制定し、昨年更に強化していました。 その後も、運動家などによる強化策の声があり、警察官が救出を執行しやすい改正となったようです。 「公共の場での動物の処遇を進歩させた法律制定に署名したことを、私は誇りに思う。これを後押ししてくれた動物保護運動家や、州の議員に感謝したい」と知事は述べています。 なお、公共の場だけでは無く、住宅での保護も対象としていくそうです。確かに、暑い中、冷房を切り、犬や猫を置いたまま外出とかしてしまいそうですよね。 色んな意味で、目配りされた法律となりましょうか。

ニューヨーク州ハドソン市では罰金を大幅アップへ

一方、ペンシルバニア州とは別に、ニューヨーク州のハドソン市では、こうしてペットを置き去りにしたドライバーへの罰金を大幅にアップする計画を、市議会が練っているそうです。 地元のHudsonValley360というサイトの報道(2018年10月26日付け)によりますと、この季節での条例案となったのには、暑さだけでなく、凍死を防ぐという狙いもあるとのことです。 条例案では、罰金額を最大で250ドルにしたいとしています。日本円で3万円近い額になりますね。ドライバーにしたらキツイ額になりそう。ただし、初犯だと50ドルぐらいになるとのことですが、市議からは「生ぬるい。2度目からは500ドルにしろ」との声が上がっているのだとか。 今年の8月27日に、街のコロンビア・メモリアル・ヘルスという公共施設の駐車場で、ペットの置き去り事故があったことが、条例案の推進の背景にあるとのことです。 やらかしてしまったのは、トラックのドライバー。屋根のない駐車場に、犬を忘れたまま1時間も放置。車中の温度は70度を超えていたと、専門家によって推定されています。 命は取り留めたものの、動物病院の関係者が取材に応えたところよると、「暑さの余り、発狂していた」とのことですから、痛ましいですね。 また、事件後に記者会見した地元の警察署長によると、「置き去りにされているので助けて上げてという通報が、1日平均40件ある」とのことですから、厳罰化もやむなしとなりましょうか。

まとめ:全米動物虐待防止協会は「皆の問題です」

全米動物虐待防止協会のHPから

全米動物虐待防止協会のHPから

なお、全米動物虐待防止協会では、8月4日付けで「これは皆さんの問題なんです」と警鐘を鳴らしながら、暑さの中で死を遂げたペットの事例を、これでもかこれでもかと挙げています。 また、どれぐらいでペットの生命が危険になるかを、上記のようなイラストで示しています。温度は華氏(摂氏に+32度)での表記です。 「犬は人間のように汗がかけません。酷暑の中では、すぐに呼吸が困難になり、心拍数や呼吸数が増加して発作を起こし、臓器に致命的とも言える重大な害を及ぼします」と、協会は指摘し、助けたとしても時間が経ちすぎていたら生存率は「指数関数的に低下します」。 ちなみに、同協会によりますと、死亡事故を防ぐ法律を制定しているのは26州だそうですから、全体の半分をようやく超えた格好でしょうか。可哀想な死亡事故を減らす施策が求められるのも、むべなるかなとなりましょう。
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