オランダに本社がある空飛ぶ自動車メーカーのPAL-V社が、中東のクウェートで自社のPAL-V Libertyという商業車をデビューさせることとなりました。11月12日に初飛行(いやいや、運転か。ややこしい!)の記念式典が同国のオランダ大使館で行われるそうです。湾岸諸国では関心が高く、「警察や沿岸警備隊の任務に使えるのでは」と思われているそうですから、ビッグ・ビジネスになるかも?
可変翼技術の進展で「空陸両用の飛行機」から「空飛ぶ車」へ
YouTubeの公式チャンネルより。
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リンクトインによりますと、PAL-V社の本社は、オランダの港町であるロッテルダムの郊外のベイリーブルッグウェグという街にあります。2008年の創業で、従業員数は200人未満とのことですから、スタートアップから巣立った新興企業という位置付けでしょうか。
創業当初は、roadable aircraft、つまり「空陸両用の飛行機」という位置づけで開発をスタートさせ、複数の大学や専門の研究機関との共同研究を重ねていったそうです。創業3年前の2005年にDVCという可変翼のテクノロジーで重要な進歩があり、実用化の目処が立ったので「飛行に必要な空気力学特性を得た一方で、妥協をしなくて良いだけの地上道での安全運転が可能になった」(同社)。かくして「空飛ぶ車」として再設計していったそうです。
ちなみに、試作機の初飛行は2012年。そして、このほどPAL-V ONEという商業用の空飛ぶ車の実用化に成功しました。「世界初で、他の追随を許さず、限定的で、歴史的な代物として、空飛ぶ車のモデルのラインナップから生まれました。モビリティの歴史がPAL-Vによって、本日から新たな章を書き加えていくのです!」(同社)と、意気軒昂です。
警察や沿岸警備隊が「この車、任務に良いかも」と高い関心を
ともあれ、10年で実用化にこぎつけたとあって、Aviation Prosという航空機情報サイトが報じています(2018年11月2日付け)。境界線の乗り物だけに、飛行機業界も関心が高いとなるのでしょうか。なお、PR NEWSWIREというプレスリリースの発表サイトの記事を引用しています。
それによると、投入されるのは、PAL-V Libertyという車種。ONEの発展系のようです。 PAL-V社では今年初めにジュネーブの国際自動車ショー(Geneva International Motor Show=GIMS)で、この空飛ぶ車をお披露目済み。詰めかけた投資家や、ジャーナリストらからは好評だったそうで、「もっとも実現可能な空飛ぶ車だ」との評価をもらっていたそうです。その後、クウェートが中東最初の商業デビュー地となり、初飛行(運行と言うべきなのか)は11月12日。同国のオランダ大使館で記念セレモニーが開催予定です。
ちなみに、当たり前ですけど、「必要な法的コンプライアンスは全てクリア済み」(同社のチーフ・エンジニアを務めるマイク・ステケレンブルグ氏)。最先端だけど、安全面での実証が確認されていないテクノロジーを使わず、既存の安全なそれを全て選択しての設計・製造だったとしています。手堅さを感じさせますね。
同社のロベルト・ディンゲマンセCEOは、クウェートでのデビューを光栄に思っていると語る一方で、中東での同社の空飛ぶ車への関心が高いとしています。警察や沿岸警備隊が「使えそうだ」と考えているのだそうです。
実際、記念式典には湾岸アラブ諸国協力理事会(Cooperation Council for the Arab States of the Gulf=GCC)の幹部も出席するとのことですから、域内で追随する国々が出てくるかもしれません。
まとめ:ただ、運転には「弊社アカデミーに通って下さい」?
via www.pal-v.com
夢があって楽しそうですね。ただ、1つ気になるのは、同社のHP。自社専用の飛行アカデミーがあるのだそうで「皆様の運転免許証を、次なるレベルに引き上げるときです! 決して忘れることなき旅を」と謳っています。
PAL-Vフライドライブというのが、アカデミーの名前でして、「自信満々の飛行士」に仕立て上げてくれるのだとか。胸に秘めていた長年の夢が叶いますよと誘っています。合格すれば、PAL-Vカーフライヤーズ・クラブの一員になれるとのことですが・・・ちょっと真意を図りかねますね。
そりゃあ、運転免許だけでなく、パイロットの資格も取れるのなら有り難いですけど、ひょっとして、この車の運転が結構難しいのかも。まぁ空を飛ぶ以上、何かあってはいけないという安全配慮なのかもしれませんが。
出典:
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