乗り物の考案に際し、動物が参考になった例は過去にもあります。典型例が、飛行機となりましょう。ほとんど羽ばたかない大きな鳥を見た先人が、グライダーを着想。そこから最終的に動力式飛行機のプロトタイプを考え出しました。だから、他にも例があるだろうとまでは思ったのですが、これにはビックリ! 自動運転車の車載カメラの性能向上のヒントになりそうな動物に、あの寿司ダネが脚光を浴びていたのですって。
答えは英語でmantis shrimp。何それ? いや「シャコ」ですわ
先に答えを書きますと、mantis shrimp。恐らく、水産業に携わる日本人を除けば、初めて目にした英単語でしょう。「シャコ」なんです。「ええええっ?」って感じですよね。
実際、英語圏のメディアでも驚きを隠せない様子で、その1つであるTECHSPOTというサイトの報道を紹介してみましょう(2018年10月17日付け)。
実は、シャコというのは非常に優れた視覚を持っていまして、真っ暗な中でも色の判別が出来るほどなのですって。一方、自動運転車のテクノロジーは急速に進歩してはいるものの、相変わらず事故は起きており、センサーやカメラの性能を上げる策が現場に求められていました。
そこで注目されたのが、シャコだったというのが話の流れです。気づいたのは、自動運転車の研究に当たっているイリノイ大学の研究者。「自動運転車業界を少しでも完璧に近づけたいと願っていた彼らは、その実現に途轍もなくオーソドックスでない方法を使った」と、サイトでは褒めてるんだか、おちゃらけてるんだか分からない書きようです。
やっぱりなぁ。日本人と違って、アメリカでは馴染み薄い存在
ちなみに、日本では寿司ダネとして馴染みがあるものの、アメリカでは口にすること自体が少ない模様。試しに「シャコ レシピ」で検索しても、パスタぐらいしかヒットしません。
サイトでも、「The Oatmealという漫画による雑学紹介サイトで調べて見たら」と書いているほど。そういう意味で、よくぞ気づいたって感じですよね。
ただ、直近の自動運転車の衝突事故の原因が、被害車両であるセミトラックの色と、発生当時(昼間でした)の空の色が共に溶け合ってしまい、センサーがうまく検知しなかったからではないかと推察されているだけに、「真っ暗であろうと正確に色彩を把握するシャコの研究で改善を」となっているそうです。
サイトでは「かなり専門性が高いが、理解したい人は下記を参照して欲しい」と、アメリカ光学会という専門機関のURLをリンク先に表示しています。
折角なのでアクセスしてみました。相当難しい話ですけど、頑張って読み込んでみました。
このサイトの「高いダイナミックレンジがある生態模倣型の偏光(光を波としてとらえた際の振動方向)撮像装置」という論文によりますと、シャコの他に、昆虫や蜘蛛、イカやタコやオウムガイなどの頭足類は、ダイナミックレンジ(写真撮影の際、階調を失わずに同時に写し込むことが可能な明暗差の幅)に於いて、人間のような脊椎動物よりも遙かに優れているのだそうです。
つまり、超高性能のレンズを2つ装着しているに等しいとなりましょう。その中でも特に凄いのが、シャコなのです。
実際、光学会でもシャコを基にした生態模倣型偏光撮像装置を制作しており、最先端のピクセルセンサーよりも高いパフォーマンスが得られたとしています。
「このセンサーは、多くの自動運転車やリモート・センシング・アプリケーションに装着されるだろう。こうした機器では、高いダイナミックレンジによる検知が、靄がかかっていたり、雨の際でも重要な情報を自動車に与えるだろう」と、論文の抜粋部分の末尾は締めくくられています。
まとめ:「シャコは目で相互コミュニケーションも行っている」
なお、engadgetの日本語版では、2016年2月22日付けの記事で、シャコの目の凄さについてレポートしていました。
それによると、英ブリストル大学の研究者が、シャコの眼の偏光のしくみを解明したと発表していたとのこと。シャコは偏光の反射などを用いて互いにコミュニケーションも行っているとされていると紹介しています。
コミュニケーションを取れるとなると、ひょっとしたら自動運転車に更なるテクノロジーを付与するのかもしれません。今後の研究に要注目かも。ともあれ、その凄さには脱帽するしかなく、ただ美味しいと食べていた我が身が恥ずかしい。
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