空飛ぶ自動車として、数多くの試作車を夜に送り出して注目されてきたTerrafugia社。他のメーカーと違い、どこかしら車としての面影を残したデザインでも知られていますが、いよいよトランジッションという実用車を来年に投入するとのこと。ハイブリッド車になるのようです。
羽を折りたたんで、地上へ空へ。ただし、離発着は空港だけ
via www.youtube.com
同社では、沿革欄で次のように謳っています。
Terrafugiaについて 弊社のミッション。それは実用的な空飛ぶ車を作り、人間の自由を新たな次元へと誘うことを意味します。車名はラテン語で「地球からの脱出」を意味します。正に、空に旅立とうとしているのです。
同社はアメリカに本社があるものの、中国系企業です。最初の実用生産モデルは来年に市場に出るはずだと、サイトで報じています。そんな同社が18日付けでリリースしたのが、ハイブリッド式の空飛ぶ自動車。
「空陸両用車」というコンセプトで、翼は可変翼で、伸ばしたら飛行機のように飛べ、畳んだら車として地上走行するという、非常に分かりやすい設計思想。 ただし、離着陸できるのは、あくまで飛行場だけだそうです。
地上では、内燃機関と電動モーターの組み合わせで走行します。モーターに電気を供給するのは、リチウム鉄リン酸(LiFePO4)バッテリーパックです。飛行巡航速度は時速161km、航続距離は644kmとのことですから、新幹線で東京〜大阪間を競争したら、負けることになるようです。
一方、空を飛ぶ際には、必要なパワーを追加できる「ブースト」モードが用意されています。シートなどのインテリアも改良され、ユーザー・インターフェイスも直感的な操作が可能になったとしています。この他、積載できる荷物の量も増えたそうです。
なお、気になる安全面ですが、3台のカメラを搭載して地上走行の際は後方の視界を確保する他、エアバッグはもちろんのこと、BRSアエロスペース社の緊急脱出パラシュートも装備されています。
もう1つの気になる点が価格。27万9000ドルとしていますが、サイトの取材に対して、定価の設定はしていないと答えています。
これだけ大きく、重いのに「軽自動車」扱いに。
一方、自動車サイトだけでなく、AVwebプラスという航空機情報サイトも、この空飛ぶ車に興味を示しています。(2018年7月17日付け)
サイトによると、リチウム鉄リン酸(LiFePO4)バッテリーを採用したのは、「他のリチウム電池の化学反応より遥かに安全だからだ」(同社)そう。飛行情報は、航空電子情報機器メーカーのDynon社から提供してもらうそうです。
また、飛行から地上走行に移行する際には、アメリカ運輸省の国家道路交通安全局が定める安全基準に従うなど、コンプライアンス対策も万全。一方、大空を所管するアメリカ連邦航空局からは、離陸時の重量と失速に関する規定から、特別な免除を受けているそうです。前例がないだけに、法律面のクリアは大変そうですね。
なお、このトランジッション・タイプの車は、2013年エアベンチャーというショーで、初飛行(初走行)させていました。以来、改良を重ねてきたそうです。
それだけに、同社のクリス・ジャランCEOは「我々は今、長年に渡る飛行と運転試験に基づく設計上の最良の特性を実装できるに至った」と感慨深け。興味深いのは「軽自動車として登録する」計画であるというところでしょうか。
最大重量が1800ポンド(816キロ)もあるのにです。ちなみに、2人乗りのようです。
まとめ:CEOは、ヘリ業界出身。次は垂直離着陸車を模索へ
役員欄を見ると、上記のジャランCEOは、マサチューセッツ工科大学出身で、ヘリコプターで知られるシコルスキー・エアクラフトの子会社に在籍。(現在も、国際ヘリコプター協会と全米ヘリコプター協会の会員です)
その後、航空業務やコンサルティングを行うTetraTech AMTに転身しました。この時に、アメリカ連邦航空局の地上と空の管制システムを近代化するプロジェクトに関わっています。色んな意味で、空と地上を行き交うビジネスに縁のある方のようです。
今後は、社としてTF-XとTF-2のコンセプト・カーで垂直離着陸車を模索していくとのこと。このような経歴の方なら、きっと何とかするでしょう。また、それこそが、皆が思い浮かべる空飛ぶ自動車のイメージですものね。
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