電気自動車を持ったときにかかるお金は、金額が制度で決まっているものと、自分の使い方で決まるものの2つに分かれます。前者は自動車税種別割、自動車重量税、継続検査(車検)と定期点検整備の周期です。車種と登録の時期が決まれば、いくら払うのかと、いつ払うのかを先に確定できます。後者は充電の電気代と充電設備で、年に何km走るか、どの電力プランを契約しているか、自宅で充電するか外の急速充電器を使うかによって変わります。
この2つを混ぜたまま「EVは維持費が安い」と言い切ると、何の話をしているのかが分からなくなります。制度の側は誰が乗っても同じ額で、しかも年度によって動きます。使い方の側は同じ車でも人によって倍以上違います。分けて数えると、自分の場合にどちらが効くのかが見えます。
制度の側は2026年に実際に動きました。東京都主税局は、令和8年3月31日をもって自動車税環境性能割および軽自動車税環境性能割が廃止されたと公表しています。これは車を取得したときにかかる税なので維持費そのものではありませんが、電気自動車に与えられていた優遇のひとつが、制度ごと無くなったということです。
このページでは、東京都主税局の税額表、e-Gov法令検索の道路運送車両法、日本自動車工業会とトヨタ自動車が示すエコカー減税の内容、日産自動車が公表しているサクラの諸元と保証条件をもとに、費用の項目を1つずつ確認します。車両価格、購入時の補助金、任意保険の保険料は扱いません。金額を確認できなかった項目は、推測で埋めずに「公表値を確認できませんでした」と書きます。
自動車税種別割は、電気自動車として独立した区分がある
毎年5月に来る自動車税種別割は、自家用乗用車では総排気量の区分ごとに年税額が決まっています。東京都主税局の税額表には、その区分の先頭に電気自動車が置かれていて、年税額は25,000円です。総排気量1リットル以下と同じ額で、区分としては別に立っています。エンジンを持たない車をどう扱うかを、排気量区分に押し込めるのではなく、独立した行として示しているわけです。
| 自家用乗用車の区分 | 年税額 |
|---|---|
| 電気自動車 | 25,000円 |
| 総排気量1リットル以下 | 25,000円 |
| 1リットル超〜1.5リットル以下 | 30,500円 |
| 1.5リットル超〜2リットル以下 | 36,000円 |
| 2リットル超〜2.5リットル以下 | 43,500円 |
| 2.5リットル超〜3リットル以下 | 50,000円 |
| 3リットル超〜3.5リットル以下 | 57,000円 |
| 3.5リットル超〜4リットル以下 | 65,500円 |
| 4リットル超〜4.5リットル以下 | 75,500円 |
| 4.5リットル超〜6リットル以下 | 87,000円 |
| 6リットル超 | 110,000円 |
出典は東京都主税局「自動車税」(確認日2026-09-05)です。納期については、同ページに5月上旬に都税総合事務センターから送付する納税通知書で、5月末日の納期限までに納めると書かれています。排気量の大きいガソリン車と比べたときの差は、この表を横に見れば分かります。2リットル級の乗用車が36,000円ですから、年でおよそ1万1千円の違いです。
この表の額は、2019年10月1日以後に初回新規登録を受けた車に適用されるものです。総務省は同日の制度変更について、1,000cc以下の区分が29,500円から25,000円へ、1,000〜1,500ccが34,500円から30,500円へ引き下げられたと説明しています。それより前に登録された車は旧税率のままなので、中古の電気自動車を検討する場合は、登録年月日がいつかを車検証で確かめる必要があります。
グリーン化特例は「翌年度分」だけに効く
東京都主税局は、電気自動車(燃料電池自動車を含む)とプラグインハイブリッド自動車について、初回新規登録した年度の翌年度分の自動車税が軽減されると案内しています。軽減率は概ね75%です。効くのは1年分だけで、翌々年度からは表どおりの額に戻ります。「EVは自動車税が安い」という言い方は、この1年分を指していることが多く、毎年続く割引ではありません。
同じページには重課の説明もあります。初回新規登録からディーゼル車は11年、ガソリン車・LPG車は13年を超えるものに、概ね15%の重課が適用されるという内容です。重課の対象として挙げられているのはこの2つで、電気自動車は挙げられていません。長く乗るほど、この差は種別割の側に出てきます。
グリーン化特例は年度ごとに対象が定められる制度です。トヨタ自動車は自社の案内で、グリーン化特例の適用期間を2028年3月31日までの新規登録車が対象と示しています。自分の登録年度が対象に入るかどうかは、都道府県の案内で確認してください。
環境性能割は廃止され、取得時の差は無くなった
東京都主税局は「令和8年3月31日をもって自動車税環境性能割及び軽自動車税環境性能割は廃止されました。」と公表しています。トヨタ自動車も、登録日が令和8年4月1日以降の自動車および軽自動車には環境性能割は課税されないと案内しています。
この税は、2019年10月に自動車取得税に代わって導入されたもので、総務省の当時の資料では電気自動車は非課税と示されていました。つまり電気自動車にとって、環境性能割は「払わなくてよい税」でした。それが制度ごと無くなったということは、取得時にガソリン車が負担していた分も無くなり、電気自動車の側にあった相対的な有利さが1つ減ったことになります。維持費の総額が増えたわけではありませんが、購入時点の比較をするときは、廃止前に書かれた記事の前提が今は成り立たない点に注意してください。
自動車重量税は、初回の継続車検まで100%減税
自動車重量税はエコカー減税の対象で、トヨタ自動車は電気自動車について自動車重量税100%減税と示し、初回継続車検時にも100%減税が適用されると案内しています。新車で登録したときと、3年後に最初の車検を受けるときの2回、重量税がかからない扱いです。
制度そのものの期間は日本自動車工業会が示しています。エコカー減税(自動車重量税)の適用期間は2026年5月1日から2028年4月30日まで、そのうち乗用車の基準は2027年5月1日に引き上げとなる、という内容です。トヨタ自動車の案内では、現行の軽減措置は2026年5月1日から2027年4月30日までの新規登録車が対象と書かれています。基準が段階的に上がる制度なので、「いつ登録したか」で扱いが変わります。契約日ではなく登録日で判定される点も、どちらの案内にも共通しています。
住んでいる都道府県で、税額が変わることがある
東京都は、都独自の制度としてZEV導入促進税制を設けています。東京都主税局によれば、対象は令和12年度までに初回新規登録した電気自動車、燃料電池自動車(水素を燃料とするもの)、プラグインハイブリッド自動車で、新規登録時と翌年度から5年度分の自動車税の課税が免除されます。
先に見たグリーン化特例が翌年度分の概ね75%軽減であるのに対し、こちらは複数年度にわたる免除です。同じ車を同じ日に登録しても、どこで登録したかによって数年分の自動車税が変わるということです。これは全国共通の制度ではないので、他の道府県に同じ扱いがあるとは限りません。維持費を試算するときは、必ず自分が住んでいる都道府県の案内を確認してください。
電気代は、電費と単価を掛けるだけで概算できる
ここからは使い方で決まる側です。電気代の計算は、カタログに載っている交流電力量消費率と、契約している電力の単価があれば組み立てられます。交流電力量消費率は1kmを走るのに必要な電力量で、単位はWh/kmです。日産自動車が公表しているサクラの環境仕様書では、交流電力量消費率は124Wh/km、一充電走行距離は180kmで、いずれも国土交通省審査値と示されています。
単価の側は、契約している小売電気事業者とプランで変わります。目安として広く使われているのが、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が算出している新電力料金目安単価で、同会のよくある質問には31円/kWh(税込)、令和4年7月22日に改定と書かれています。算出の根拠は、経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会が公表する「電力取引報」における全小売電気事業者の販売電力量・販売額の集計値などです。日産自動車も充電費用の説明でこの31円/kWhを参考単価として挙げています。
たとえば年8,000km走ると仮定すると、0.124kWh/km×8,000kmで992kWh、これに31円/kWhを掛けて30,752円になります。この2つの数字はどちらも仮定です。走行距離は人によって違いますし、単価も契約次第です。実際の請求額には基本料金、段階別の単価、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金が加わるため、上の計算はあくまで「充電に使う電力量ぶんの金額」を見るためのものです。
日産自動車は、一充電走行距離について、定められた試験条件での値であり、使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)、整備状況(タイヤの空気圧等)に応じて値は異なると注記しています。冬にヒーターを使えば同じ距離でも使う電力量は増えます。カタログ値で出した額は下限に近い見積りだと考えておくのが安全です。
外で急速充電器を使う場合は、この計算と別の勘定になります。課金の単位や会員料金は充電サービスの事業者ごとに違い、1回いくら、1分いくら、1kWhいくらのどれで課金するかも統一されていません。参考として、日産自動車は急速充電の目安を10分間の充電量で示していて、サクラ(20kWh)では2.3kWhと書かれています。自宅充電が主体か、外の急速充電が主体かで、電気代の考え方そのものが変わります。
充電にかかる時間と、設備の費用
自宅で充電するなら、時間の見当も要ります。日産自動車が公表しているサクラの充電時間は次のとおりです。
| 充電方法 | 所要時間 |
|---|---|
| 普通充電(100V) | 約12時間 |
| 普通充電(200V) | 約8時間 |
| 急速充電 | 約40分 |
出典は日産自動車「サクラ|充電・航続距離」(確認日2026-09-05)です。普通充電の時間には「バッテリー温度約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から満充電までの時間」「200V 14.5Aで充電を行った場合」という条件が注記されています。急速充電の約40分は、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から充電量80%まで、30kW以上の急速充電器を使用した場合の値です。急速充電の表示が80%までである点は、満充電までの時間ではないという意味で重要です。
自宅に200Vのコンセントを設ける工事の費用は、分電盤の位置、駐車場までの距離、建物の構造で変わります。全国共通の公表値を確認できませんでしたので、この記事では金額を書きません。見積りを取るときは、コンセント本体の代金と工事費を分けて出してもらうと、他社の見積りと比べられます。
点検と車検は、周期が同じで項目が減る
電気自動車だからといって、検査や点検の周期が変わることはありません。道路運送車両法第61条は、自動車検査証の有効期間について、初めて交付する場合の自家用乗用自動車を3年、その他の自動車を2年と定めています。同法第48条は定期点検整備の期間を定めていて、事業用や車両総重量8トン以上などを除く自動車、つまり一般的な自家用乗用車は一年ごとです。動力源による例外は、どちらの条文にも置かれていません。
変わるのは中身のほうです。日産自動車は電気自動車のメンテナンスの案内で、「ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置」と「エグゾースト・パイプ及びマフラ」について、エンジン項目のため必要なしと示しています。これらは点検基準に並んでいる項目名で、燃焼を伴わない車では点検する対象そのものが存在しません。点検の周期と項目の関係は、日常点検と定期点検の違いで整理しています。車検を受ける場所と流れは車検はいつ、どこで受けるかにまとめました。
ただし、項目が減ることが、そのまま請求額の減少になるとは限りません。点検整備の料金は工場ごとに決められていて、全国共通の公表値がありません。高電圧の部品を扱うための作業が加わる場合もあります。金額を比べたいなら、見積書の項目を並べて、何をして何をしないのかを確認するほうが確実です。
駆動用バッテリーは、保証の範囲で見る
電気自動車の維持費で読者がいちばん気にするのは、駆動用バッテリーの交換です。交換費用そのものは公表されていないため、この記事では金額を書きません。代わりに確認できるのが保証の条件です。
日産自動車は、バッテリー容量を「8年160,000km」保証していると案内しています。内容は、リチウムイオンバッテリー容量計が9セグメントを割り込んだ場合に、修理や部品交換を行って9セグメント以上へ復帰することを保証するというものです。あわせて、電気自動車のパワートレインにあたる部品は特別保証部品とされ、その保証期間は5年または10万km走行時のどちらか早い方と示されています。
保証は「何年まで無償か」ではなく「どの状態になったら直すか」で書かれています。容量が少し落ちただけでは対象になりません。中古の電気自動車を選ぶときに年式と走行距離の両方を見るのは、この2つの条件のどちらが先に来るかで保証の残りが決まるからです。
自分の維持費を出す順番
ここまでの内容をそのまま手順にすると、次の順序になります。
- 車検証で初回新規登録の年月を確認する。種別割の税率とグリーン化特例の対象年度が、ここで決まります
- 住んでいる都道府県の自動車税のページで、独自制度があるかを確認する。東京都のZEV導入促進税制のような免除が用意されている場合があります
- カタログか環境仕様書で交流電力量消費率を確認し、自分の年間走行距離と電力の単価を掛ける
- 自宅充電の設備が要るなら、コンセント本体と工事費を分けた見積りを取る
- 継続検査と定期点検の時期を、登録月から数えて予定表に入れる
金額が動きやすいのは、電気代と点検整備の見積り、そして都道府県の独自制度です。税と検査の周期は法令と条例で決まるので、一度確認すれば当分は変わりません。維持費全体の考え方は車の維持費、自動車税の制度そのものは自動車税で扱っています。