ガソリン代は、走った距離を燃費で割り、出てきた給油量に1Lあたりの単価を掛ければ出ます。1か月分を知りたいなら1か月に走る距離を、1年分を知りたいなら1年で走る距離を入れます。式そのものは割り算と掛け算が1回ずつで終わります。
つまずくのは式ではなく、真ん中に入れる燃費です。カタログに載っている燃費は、いまはWLTCモードという国際統一試験法で測った値で、しかも全体の燃費のほかに市街地・郊外・高速道路という走行環境ごとの燃費が並んでいます。どれを入れるかで答えが変わります。国土交通省は、この表示を義務付けた2017年の報道発表で、カタログ等に表示される燃費に比べ実際の燃費が最大4割下回るとの指摘があり、この乖離は走行環境や運転方法の違い等により生じている、と説明しています。
このページでは、計算式と3つの数字の集め方、カタログのどの燃費値を使うか、自分の実燃費を出す方法、そして単価に法律で決まっている税がいくら含まれているかを順に見ます。数値は国土交通省の公表資料と、揮発油税法・地方揮発油税法・石油石炭税法の条文、財務省の資料から取りました。特定の週の全国平均価格は載せません。資源エネルギー庁がガソリン・軽油・灯油・重油の価格を毎週調査して公表しているとおり単価は毎週動くので、自分の給油レシートの数字を使うほうが正確です。
式は「距離 ÷ 燃費 × 単価」だけ
必要なのは3つの数字です。走行距離(km)、燃費(km/L)、単価(円/L)。この順に距離を燃費で割り、その答えに単価を掛けます。
たとえば1年に10,000km走り、燃費が20km/Lで、単価が160円/Lなら、10,000 ÷ 20 = 500L、500 × 160 = 80,000円です。月に直したいときは12で割ります。この10,000kmと160円/Lは、式の動き方を見るために置いた仮定で、実勢の値ではありません。
3つのうち、いちばん動くのは単価です。次に動くのが燃費で、こちらは季節や乗り方で変わります。距離はいちばん安定していて、しかも自分で確認できます。車検証や定期点検記録簿には点検時の走行距離が残っているので、2回分の差を経過月数で割れば、自分が1か月に何km走っているかが出ます。
金額の差が大きく見えるのは、割り算が効くからです。燃費が2倍になれば給油量は半分になり、単価が同じなら燃料費も半分になります。逆に言えば、燃費の値を1つ取り違えるだけで、年間の見積りが数万円ずれます。だから次に、どの燃費値を使うかを決めます。
カタログには4つの燃費値が並んでいる
国土交通省は2017年7月4日の報道発表で、乗用車の燃費について、国際統一試験法であるWLTCモードに基づく全体の燃費に加え、「市街地」「郊外」「高速道路」といった走行環境毎の燃費をカタログ等に表示することを義務付けると発表しました。国土交通大臣がWLTCモードにより燃費を算定した自動車について、市街地モード、郊外モード、高速道路モードの燃費を、それらの説明とともにカタログおよび展示に供する自動車に表示させる、という内容です。義務化は2018年10月からの新型車に適用されています。
つまり、いまのカタログにある燃費は1つではなく4つあります。全体を表すWLTCモードの値と、走行環境ごとの3つの値です。ガソリン代の計算に入れるべきなのは、自分の走り方にいちばん近いモードの値です。通勤で毎日渋滞に並ぶ人が高速道路モードの値で計算すれば、実際より安い見積りになります。
自分の走り方が1つのモードに収まらないことのほうが多いはずです。平日は市街地、週末は高速道路という使い方なら、片方だけで計算しても合いません。その場合は、モードごとの距離を分けて計算し、足し合わせるほうが実態に近づきます。平日の市街地走行が月400km、週末の高速走行が月200kmなら、それぞれ市街地モードと高速道路モードの燃費で割ってから給油量を合計します。
車種ごとの燃費値は、国土交通省が「自動車の燃費性能の評価及び公表に関する実施要領」(平成16年国土交通省告示第61号)にもとづいて公表しています。令和8年9月1日現在の公表が出ており、次回は令和8年10月1日に更新される予定と案内されています。年に一度まとまる「自動車燃費一覧」もあり、令和8年3月版には令和7年末時点で新車販売されていた車両の燃費データがメーカー別・車種別に載っています。手元にカタログが無いときは、こちらで型式ごとの値を確認できます。
測り方の違う値を並べて割らない
もう1つ気をつけるのは、古い資料に載っている燃費です。WLTCモードの前はJC08モードという日本独自の試験法が使われていて、国土交通省の自動車燃費一覧でも、乗用車の区分にWLTCモードとJC08モードの両方があります。中古車の資料や2018年より前のカタログを見ると、JC08モードの値だけが載っていることがあります。
この2つは測り方が違うので、数字だけを並べて比べても意味がありません。ガソリン代の計算に使う場合も同じで、JC08モードの値で割った結果とWLTCモードの値で割った結果を、そのまま「同じ条件での比較」として扱わないでください。比べたいのが車どうしなら、両方の車で同じモードの値がそろっているかを先に確かめます。そろわないときは、次に説明する実燃費を自分で測るほうが早いことがあります。
新車のカタログやスペック表の読み方そのものは、新車のスペック表はどこを見るかでも扱っています。
実燃費は満タン法で出す
いちばん確実なのは、自分の車で実際に測ることです。手順は決まっていて、給油機で満タンにしてトリップメーターをゼロに戻し、次に給油するときも満タンにして、そのときの給油量と走行距離を記録します。走行距離を給油量で割った値が、その期間の実燃費です。
| 記録するもの | どこで確認するか |
|---|---|
| 給油した日 | 給油のレシート |
| 給油量(L) | 給油のレシート |
| 単価(円/L) | 給油のレシート |
| 前回の給油からの走行距離(km) | トリップメーター |
| 実燃費(km/L) | 走行距離 ÷ 給油量 |
1回だけでは、その期間の走り方が偏っていることがあります。夏にエアコンを使い続けた月と、暖かい季節に幹線道路を淡々と走った月では条件が違います。3回から5回ぶんを記録して、走行距離の合計を給油量の合計で割ると、ならした値が出ます。
このとき、レシートに書かれている単価もそのまま使えます。店頭に出ている価格をそのまま使えば、税の扱いを自分で足し引きする必要はありません。会員価格や割引を使っているなら、その割引後の単価が自分にとっての実勢値です。
実燃費が分かると、カタログのどのモードの値に近いかも見えます。近いモードが分かれば、次に車を選ぶときに、そのモードの値どうしで候補を比べられます。燃費のよい車の選び方は燃費のいい車の選び方、ハイブリッド車とガソリン車のどちらが自分の走り方に合うかはハイブリッドとガソリン車の比較で整理しています。
単価には、法律で決まっている税が31.5円入っている
単価は毎週動きますが、その中に含まれている税の額は法律で決まっています。ガソリン1Lあたりで見ると、次の3つです。
| 税目 | 条文の表記 | 1Lあたり |
|---|---|---|
| 揮発油税 | 揮発油一キロリットルにつき二万四千三百円 | 24.3円 |
| 地方揮発油税 | 揮発油一キロリットルにつき四千四百円 | 4.4円 |
| 石油石炭税(原油及び石油製品の本則) | 一キロリットルにつき二千四十円 | 2.04円 |
| 石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例の適用後) | 財務省資料の記載 | 2.8円 |
揮発油税と地方揮発油税の税率は、揮発油税法第9条と地方揮発油税法第4条の条文そのものです。1キロリットルは1,000Lなので、1Lあたりに直すと24.3円と4.4円になります。石油石炭税は石油石炭税法第9条で原油及び石油製品が1キロリットルにつき2,040円と定められていますが、財務省は、ガソリンに係る日本の石油石炭税の本則税率は2.04円/ℓであるが、地球温暖化対策のための課税の特例により2.8円/ℓとなっている、と説明しています。3つを足すと31.5円です。
この税を納めているのは、給油する私たちではありません。揮発油税法第3条は、揮発油の製造者はその製造場から移出した揮発油につき揮発油税を納める義務がある、保税地域から引き取る者はその引き取る揮発油につき納める義務がある、と定めています。製造場から出る段階で課され、価格に含まれる形で消費者に回ってきます。だからレシートに税額の内訳は出ませんし、給油所を変えても31.5円の部分は変わりません。
なお、かつてガソリンには特例税率(いわゆる暫定税率)が上乗せされていましたが、これは廃止され、国税庁が「揮発油税等の特例税率の廃止について」として関係する手続を案内しています。上の表の24.3円と4.4円は、廃止後の現在の条文にある税率です。数年前に書かれた記事の税額をそのまま持ってくると、いまの価格の説明になりません。
将来の変更も公表されています。財務省の資料には、令和16年4月1日より、揮発油税の税率については24,000円、地方揮発油税の税率については4,700円となる、と注記されています。合計では現在と同じ28,700円ですが、国税と地方税の配分が変わる形です。
自分の年間ガソリン代を出す順番
ここまでを手順にすると、次の5つになります。
- 車検証か定期点検記録簿で、2回分の走行距離を確認する。差を経過月数で割ると、1か月あたりの走行距離が出ます
- 使う燃費値を決める。実燃費を測ってあるならそれを、無ければカタログのうち自分の走り方に近いモードの値を使います
- 直近の給油レシートで単価を確認する。会員価格を使っているなら割引後の単価にします
- 1か月の走行距離を燃費で割り、給油量を出す。その給油量に単価を掛けると1か月分の金額になります
- 12倍して年額にする。市街地と高速道路で走り方が分かれるなら、距離を分けて計算してから足します
この計算で出るのは燃料費だけです。自動車税種別割、自動車重量税、車検、任意保険、駐車場代は入っていません。車を持つ費用の全体を見たいときは、それぞれを別に足していきます。電気自動車の場合は、燃料費にあたる部分が電気代に置き換わり、税や保証の考え方も変わります。内訳はEVの維持費は何にいくらかかるかで扱いました。
見積りがずれる原因を先に知っておく
計算どおりにならない理由は、だいたい決まっています。1つ目は単価です。毎週動くうえ、地域や給油所によっても違います。1年分の見積りに1週分の単価を掛けている以上、実績とずれるのは当然だと考えておいてください。
2つ目は燃費です。国土交通省が指摘しているとおり、乖離は走行環境や運転方法の違い等により生じます。同じ車でも、渋滞の多い道を短距離で使えばカタログの全体値より悪くなりますし、エアコンの使用や積載も影響します。カタログ値で出した金額は、下振れしやすい見積りだと考えておくほうが安全です。
3つ目は走行距離そのものです。「だいたい月500kmくらい」という感覚は、実際の記録と食い違うことがあります。トリップメーターを1か月そのままにして測るか、点検記録の走行距離から逆算するほうが確実です。3つの数字のうち、自分で正確にできるのはここだけなので、最初に押さえておく価値があります。
ガソリン代を下げたいときに動かせるのは、実質的には距離と燃費です。単価は選べる範囲が限られますし、税の31.5円は誰が入れても同じです。まずは自分の実燃費と月間走行距離を数字にして、そのうえで車の使い方や車種の見直しを考えるほうが、順序として無理がありません。