オーストラリアやアメリカで模索されるトラック専用レーン。成果やいかに?

オーストラリアやアメリカで、「高速道路のトラック専用レーン」が模索されています。渋滞を緩和したいというのが、運輸当局の狙いなのですが、インターネット上では疑問視する人が少なくありません。あるニュースサイトでは「ギャンブルだ」と言い切っているぐらい。果たして、成果や如何に?

11月1日から実験を開始するオーストラリア

トラック専用レーンの実験が行われるオーストラリアのM1...

トラック専用レーンの実験が行われるオーストラリアのM1高速道(RMSのHPより)

オーストラリアのNBNニュースというサイトの記事を紹介します(2018年10月11日付け)。 それによると、専用レーンを設けるのは、地元でM1と呼ばれている高速道路。オーストラリアの中央海岸に位置するウォールーンガーからカリオンまでの区間の左側車線を、4.5トン以上の重量の車両にだけ開放するという実験を行うと、同国の国交省に当たるRoads and Maritime Services(RMS)が発表しています。つまり、正確にはトラックだけでなく、大型バスも対象になります。 「中央海岸からシドニーまでのM1は、1日あたり7万5000台の車両が行き交う。この専用化により、右側レーンへ出入りする大型車の安全を大きく改善することとなろう」と、RMSの広報担当者は趣旨説明しています。 確かに、高速道でのトラックの車線変更は、後続車にとってビクビクものですよね。こっちの車が小さい分、威圧感も覚えがちですし。 なお、大型車以外のドライバーがレーンを利用した場合、厳しいペナルティを科すと、RMSでは釘を差しています。

「違反ドライバーから罰金取りたいだけさ」

実験としては興味深いものがありますが、記事を読んだ地元のユーザーからは懐疑的な声が上がっています。 例えば、こんな声が。 「隠れてねずみ取りする代わりに、前みたいにパトカーを巡回させなよ。そうすれば安全が高まるだろうし。ま、この新しい法律とやらは、罰金収入を増やすだけだろうな」 ねずみ取りって、どこの国でも憎まれているのですね。ともあれ、違反車両をどう取り締まるかが難しそうな気がしますね。あるいは、こんな声も。 「何度も書いてるけどさ、トラックのドライバーを怒れって! むしろ、スピード別のレーンにしなよ。向こうが時速100キロで走っていて、こっちが110キロ出してるんだから、そりゃあギクシャクもするだろうよ。第一、トラックのドライバーって、法律で労働可能時間が制限されているんだからさ、連中に無駄な制限とかして時間の浪費させたら駄目だよ」 トラック運転手が嫌いなのか、気遣っているのかが分かりづらいですけど…。

「坂が多いし、実験の場として意義がある」

旗色がよろしくない感じですけど、RMS側では「7万5000台の車の内、大型車は7000台だ。もともと大型車の往来が激しく、坂が多い場所だ」と、実験の場として選んだ理由を説明しています。また、消防車や救急車などは制限の対象外だとしています。 ちなみに、実験期間は1年。専用の標識を設ける一方、高速道路を走行するドライバーに対し、電光掲示板で実験を行うという告知を続けてきました。 驚かされるのは、違反車両への罰金。最大で2200オーストラリアドルを徴収されるそうです。日本円に換算して、約17万6000円。なるほど「罰金収入を増やすだけ」という感想は、あながち間違っていない感じですね。

まとめ:アメリカでは「ギャンブル」との声

アトランタ、米国ジョージア州

アトランタ、米国ジョージア州

RMSでは「海外でも実験されているから」と、実験理由を説明しています。実際、専用レーン構想を打ち出している例があります。アメリカのジョージア州です。 myAJCというニュースサイトが、今年の3月30日付けで報じています。対象となるのは、 I-75という高速道路。隣接する州と連絡しています。 この高速道路のメイコンからマクダーナフまでの区間に、トラック専用レーンを設定しようというのがアトランタ州の構想。一般車両が入れないよう、仕切りまで設けるそうです。かける費用が20億ドルなので、サイトでは「ギャンブルだ」と見出しで疑問視しています。 設定によって、交通渋滞が緩和され、他の州への運転の安全性が高まると、ジョージア州の運輸省の担当者は説明しています。「うまくいかないと思ったら、やらない。確信が現実となったら、州の全域でやろうと思っている」と運輸担当ディレクターのジェイ・ロバーツ氏は自信満々です。 もともと、貨物運送が激しいという州独自の事情があっての実験ですが、専門家の間からは「過去にジョージア州で実施された道路プロジェクトで、もっとも高額だったのものより更に倍近い。他に選択肢などがないのか。もっと精査してから実施すべきではないか」(ミシガン大学運輸調査研究所の元リサーチ・サイエンティストのジョン・ウッドルーフ氏)との声が上がっています。 州では、向こう10年間に様々な道路プロジェクトを実施予定で、その一環がレーン設定。2015年7月1日付けで、新税によって建設の財源の確保が行われており、幾つかの高速道では道幅を拡張中。それやこれやで何やら気が大きくなっている感じがしますね。 「貨物輸送のパターンは複数ある」との指摘も出て います。つまり、渋滞のパターンも複数あるわけで、専用レーン設定で事足れりとはならないとなります。 オーストラリアの担当者は、こうした懸念を知っているのでしょうか?せめて成功してから踏み切っても良い気がします。
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