電気自動車の充電にかかるお金は、どこで充電するかだけでなく、どんな単位で課金されるかで変わります。自宅で充電する場合の目安は、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が算出している新電力料金目安単価の31円/kWh(税込)です。これに対して、株式会社e-Mobility Power(以下eMP)が設置・運営する急速充電器をビジターとして使うと、kWh課金を導入した拠点では一般道路110円/kWh、高速道路143円/kWh(いずれも税込)です。1kWhあたりで見ると、3.5倍から4.6倍になります。
ただし、外で払う料金はこの2つの数字だけでは出ません。eMPの直営急速充電器の多くは、入った電力量ではなくつないでいた時間で課金されます。分課金では、同じ55円/分を払っても、1分間に車へ入る電力量が多い車と少ない車で、1kWhあたりの支払額が3倍開きます。日産自動車が充電費用の試算で前提に置いている10分間の充電量は、アリアとリーフで7.0kWh、サクラで2.3kWhです。同じ10分で550円を払って、入る量が3倍違うということです。
このページでは、2026年4月に変わったeMPのビジター料金、分課金とkWh課金のどちらが安くなるかの分かれ目、メーカー各社の充電カードの月額と単価を、公表されている値から順に見ます。扱うのは外で払う料金の決まり方です。電費(Wh/km)と単価を掛けて1年分の電気代を出す手順と、税・車検を含む維持費全体の内訳はEVの維持費は何にいくらかかるかにあります。車両価格、購入時の補助金、自宅の設備工事費は扱いません。
2026年4月から、ビジター料金は2つの課金方式に分かれた
eMPは、2026年4月1日(水)12:00より順次、ビジター利用料金にkWh課金を導入しました。同社の案内では、EVとPHEVのバッテリー容量や充電能力が多様化したことを背景に、より公平性の高いkWh課金の導入ニーズが高まっていると説明されています。kWh課金を導入したのは96拠点で、それ以外の直営急速充電器は、充電器の立地と最大出力に応じた時間課金へ移行しました。
| 課金方式と区分 | 一般道路 | 高速道路 |
|---|---|---|
| kWh課金(導入した96拠点) | 110円/kWh | 143円/kWh |
| 時間課金・50kW以下 | 55円/分 | 77円/分 |
| 時間課金・50kW超〜100kW以下 | 77円/分 | 99円/分 |
| 時間課金・100kW超 | 99円/分 | 121円/分 |
出典はeMP「ビジター利用料金のご案内」(確認日 2026-10-14)で、いずれも税込です。表の「高速道路」にはサービスエリア、パーキングエリア、ハイウェイオアシスが含まれ、「一般道路」はそれ以外の設置箇所を指します。高速道路の単価が高い理由も示されていて、同社は高速道路の充電ステーションについて、整備工事費や運営管理費が一般道路と比較して高額化すると説明しています。急速充電器の利用時間は1回30分までと定められているため、1回の上限額は区分ごとに決まります。
ここで注意が2つあります。1つは、この表がeMP自身が設置・運営する充電器の料金だということです。同社のネットワークにつながっている提携充電器の料金は「充電器ごとに異なります」とされ、アプリで確認する形になっています。同じネットワークの中でも、設置者が違えば単価が違います。
もう1つは、この表がビジター、つまり充電カードを持たずその場で支払う人向けの料金だということです。eMPは、充電カード会員が直営急速充電器を利用する際の料金は、各会員事業者が定める料金が適用されると明記しています。後で見るように、会員向けの料金は各社とも分課金です。つまり会員になっている人は、同じ充電器の前に立っていても、kWh課金のほうを選ぶという判断はできません。
分課金では、1分間に入る電力量が実質単価を決める
分課金は時間に対して払う方式なので、1kWhあたりいくらになったかは、充電が終わってから割り算をしないと分かりません。日産自動車は充電費用の試算で、10分間の充電量をアリア(91kWh、66kWh)とリーフ(78kWh、55kWh)で7.0kWh、サクラ(20kWh)で2.3kWhとして計算していると示しています。この2つの値を、一般道路・50kW以下の区分にあたる55円/分に当てると、次のようになります。
10分なら払う金額は550円で、どちらの車でも同じです。入った電力量が7.0kWhなら550円÷7.0kWh=78.6円/kWh、2.3kWhなら550円÷2.3kWh=239.1円/kWhです。前者はkWh課金の110円/kWhより約3割安く、後者は約2.2倍になります。同じ充電器で同じ時間、同じ金額を払っても、単価は3倍違います。
この差は車の性格の差です。サクラのバッテリー容量は20kWhで、日産の試算区分ではもっとも小さいものです。容量の大きいアリアやリーフは、一度に受け入れられる電力も大きくなります。ただし、この2つの値は日産が試算の前提として置いたものです。実際に何kWh入るかは、使う充電器の最大出力と車側が受け入れられる電力の小さいほうで決まり、充電を始めたときの残量にも左右されます。どの拠点でも同じ量が入ると考えないでください。
分課金のもとでは、待ち時間を減らす行動と支払額を減らす行動が一致します。出力の高い充電器を選び、電池が受け入れやすい残量のうちに充電を終えるほど、1kWhあたりは安くなります。逆に、満充電に近づいて受け入れる電力が落ちた状態で時間を延ばすと、入る量は増えないのに分数だけが進みます。1回30分の上限は、この意味では歯止めにもなっています。
どちらが安いかは、割り算で分かれ目が出る
kWh課金と分課金のどちらが安くなるかは、暗算で確かめられます。分課金の単価をkWh課金の単価で割ると、1分あたり何kWh入れば両者が同額になるかが出ます。一般道路・50kW以下なら55円/分÷110円/kWhで0.50kWh/分です。60を掛ければ、電力に直した値(30kW)になります。
| 充電器の区分 | 分課金 | kWh課金 | 同額になる充電量 | 電力に直すと |
|---|---|---|---|---|
| 一般道路・50kW以下 | 55円/分 | 110円/kWh | 0.50kWh/分 | 30kW |
| 一般道路・50kW超〜100kW以下 | 77円/分 | 110円/kWh | 0.70kWh/分 | 42kW |
| 一般道路・100kW超 | 99円/分 | 110円/kWh | 0.90kWh/分 | 54kW |
| 高速道路・50kW以下 | 77円/分 | 143円/kWh | 約0.54kWh/分 | 約32kW |
| 高速道路・50kW超〜100kW以下 | 99円/分 | 143円/kWh | 約0.69kWh/分 | 約42kW |
| 高速道路・100kW超 | 121円/分 | 143円/kWh | 約0.85kWh/分 | 約51kW |
分課金とkWh課金の単価はeMPの公表値(確認日 2026-10-14)で、右の2列は割り算の結果です。読み方はこうなります。その分数で平均してこの量より多く入るならば分課金のほうが安く、届かないならkWh課金のほうが安い、ということです。先の例でいえば、10分で7.0kWh入る車は0.70kWh/分なので、一般道路の50kW以下の区分では分課金が有利になり、10分で2.3kWh入る車は0.23kWh/分なので、kWh課金のほうが有利です。
区分が上がると分単価も上がるため、分かれ目も上がります。そして受け入れられる電力が区分に追いつかない車は、高出力の充電器で分課金を払うほど不利になります。この点は、設置の実態とあわせて見ておく意味があります。eMPが2026年4月30日に公表した整備実績では、2026年3月末時点で、同社が設置・運営する一般道路の急速充電ステーションは全国で合計1,677箇所(2,460口)、そのうち4割強にあたる740箇所に一口最大出力90kW以上の急速充電器を設置しているとされています。高速道路のサービスエリアとパーキングエリアは合計454箇所(1,066口)で、約6割の272箇所が1箇所あたり2口以上、さらにそのうち90箇所に一口最大出力150kWの急速充電器があります。ネットワーク全体の接続充電器数は27,122口(急速9,795口、普通17,327口)です。
充電カードは、月額と分単価の組み合わせで決まる
メーカーが用意している充電サービスは、月額基本料金と分単価の組み合わせです。公表されている料金を並べます。
| サービス・プラン | 月額基本料金 | 急速充電 | 普通充電 | 入会時 |
|---|---|---|---|---|
| 日産 ZESP3 プレミアム100 | 4,400円 | 100分を含み、超過44.0円/分 | 600分を含み、超過3.3円/分 | 事務手数料1,650円 |
| 日産 ZESP3 プレミアム200 | 6,600円 | 200分を含み、超過38.5円/分 | 600分を含み、超過3.3円/分 | 事務手数料1,650円 |
| 日産 ZESP3 プレミアム400 | 11,000円 | 400分を含み、超過33.0円/分 | 600分を含み、超過3.3円/分 | 事務手数料1,650円 |
| 日産 ZESP3 シンプル | 1,100円 | 99.0円/分 | 3.3円/分 | 事務手数料1,650円 |
| 三菱 電動車両サポート ベーシック | 1,100円 | 販売店27.5円/分、カテゴリーA 44.0円/分、カテゴリーB 55.0円/分 | 6.6円/分 | 入会金1,650円 |
| 三菱 電動車両サポート プレミアム | 2,750円 | 販売店19.8円/分、カテゴリーA 33.0円/分、カテゴリーB 55.0円/分 | 3.3円/分 | 入会金1,650円 |
| トヨタ TEEMO | 0円 | 50kW以下40円/分、50kW超〜150kW未満60円/分、150kW以上80円/分 | 一律5.5円/分 | 入会費は不要 |
出典は日産自動車のZESP3の案内と改定内容のFAQ、三菱自動車の電動車両サポートの案内と急速充電料金のFAQ、トヨタ自動車のTEEMOの利用料金ページです(いずれも確認日 2026-10-14、税込)。ZESP3の料金表は2023年9月1日改定の内容で、このとき急速充電の課金単位が10分単位から1分単位に変わりました。三菱のカテゴリーは充電器の系列による区分で、販売店の充電器、カテゴリーA、カテゴリーBの順に単価が上がります。同じ会員証でも、どこの充電器に差すかで単価が変わります。
月額に含まれる分数を使い切った場合の1分あたりを計算すると、プレミアム100は4,400円÷100分で44.0円/分、プレミアム200は6,600円÷200分で33.0円/分、プレミアム400は11,000円÷400分で27.5円/分です。プレミアム100は含まれる分と超過分が同じ44.0円/分で、200と400は含まれる分のほうが超過分より安くなります。上位プランは、使い切る前提でだけ単価が下がります。
シンプルとプレミアム100の境目も出せます。月額の差は4,400円−1,100円=3,300円で、これをシンプルの99.0円/分で割ると約33分です。急速充電だけを見て、普通充電と事務手数料を含めない計算では、月に急速充電を33分より多く使うならプレミアム100のほうが安くなります。1回10分の充電なら、月3回(30分)では届かず、4回(40分)で超える水準です。この計算は料金表の数字をそのまま割っただけのもので、特定の人の請求額を示すものではありません。
TEEMOは月額基本料金が0円で入会費も不要とされており、出力の区分で単価が変わる形です。eMPが2026年4月に移行した「立地と最大出力に応じた時間課金」と同じ考え方です。同じページには、TEEMO充電器だけを使う場合のビジター料金として、50kW以下60円/分、50kW超〜150kW未満90円/分、150kW以上120円/分も示されています。会員かどうかで、同じ充電器の単価が1.5倍になります。
自宅の単価は1桁違うが、目安単価は自分の単価ではない
冒頭に出した31円/kWhは、全国家庭電気製品公正取引協議会が算出している新電力料金目安単価で、令和4年7月22日に改定されたものです。算出の根拠は、経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会が公表する「電力取引報」における全小売電気事業者の販売電力量・販売額の集計値などだと説明されています。日産自動車も、充電費用の案内でこの31円/kWhを電気代の目安単価として使っています。
つまりこれは全国を集計した平均的な水準であって、自分の契約の単価ではありません。自宅充電の金額を知りたいなら、検針票か契約しているプランの料金表で自分の単価を確かめ、そこに置き換えてください。時間帯によって単価が変わるプランを契約している場合は、充電する時間帯の単価を使います。自宅の充電設備を設ける工事の費用については、全国共通の公表値を確認できなかったため、この記事では金額を書きません。
外の急速充電が自宅の3倍から4倍の単価だとしても、それが不利かどうかは使い方で変わります。走行の大半を自宅充電でまかない、遠出のときだけ急速充電を足す使い方なら、単価の高い部分は全体のごく一部です。逆に自宅で充電できない環境なら、外の充電がそのまま燃料代の位置を占めます。ガソリン車の場合の計算と比べるならガソリン代はいくらかかるかの計算を、税や車検を含む全体像はEVの維持費は何にいくらかかるかを見てください。
自分の充電料金を出す順番
ここまでの内容は、次の順で自分の条件に当てはめられます。
- 自宅で充電できるかを確かめる。できるなら、検針票で自分の電力の単価(円/kWh)を確認する
- よく使う急速充電器が、直営か提携か、一般道路か高速道路か、最大出力はいくつかを調べる。料金表の区分はここで決まります
- その充電器で、自分の車が10分あたり何kWh入るかを控える。1回ごとの充電量が表示される場合は、分数で割って1分あたりに直す
- 2で調べた区分の分かれ目(表の右2列)と3の値を比べ、kWh課金と分課金のどちらが安い側かを決める
- 月に何分くらい急速充電を使うかを数え、月額基本料金のあるプランと、月額のないビジターや0円のプランを比べる
動きやすいのは、外の充電の料金体系です。2026年4月に実際に方式が変わり、会員向けの料金も各社が改定を重ねています。この記事の単価はすべて確認日 2026-10-14 時点の公表値で、再確認の周期は120日に設定しています。出かける前に、使う予定の充電器の料金をアプリか公式ページで確かめるのが確実です。