6月26日に発表され、発売が開始されたトヨタ カローラスポーツに試乗しました。このクルマはNRE(ガソリンモデル)21#またはZWE(ハイブリッドモデル)21#型という型式が与えられた、12代目カローラの先頭を切って登場したモデルとなります。今回のモデルチェンジでは先代モデルのヴィッツベースのプラットフォームから、現行プリウスやC-HRと共通の車台であるTNGA GA-Cプラットフォームが採用されることになり、国内においては車台から一新された力の入ったモデルチェンジとなりました。今回は1200CC直噴ターボエンジン搭載の最上級グレードG“Z”(CVT・2,419,200円)に試乗し、その実力を検証しました。
エクステリア
フロント ボディカラーはシアンメタリック
リヤ
このエクステリアデザインを見ると、先代アクセラスポーツって車幅にもっと余裕を持たせてこのカローラスポーツのように踏ん張り感を持たせて登場したかったのかな、と思ってしまいます。
エクステリアは切れ長のヘッドランプやテールランプ、そして大開口のバンパーグリル部分に個性を持たせているものの、全体的にはスポーティだけど保守的なデザインだなぁ、という印象です。
ホイールベースの2,640㎜は先代アクセラスポーツと共通の数値であることも、その先代アクセラスポーツと似てしまう要因になっているようですね。
インテリア
ダッシュボード
ダッシュボードのデザインは同じ車台を持つ兄弟車のC-HRに近いデザインですね。カローラスポーツは空調スイッチにダイヤルが採用されていて使い勝手がC-HRよりも高められています。
クオリティは国内のライバル車であるホンダ シビックハッチバックやスバル インプレッサスポーツ、そしてマツダ アクセラスポーツよりも優れている印象で、ソフトパッドに合皮調素材を貼付し、そこにステッチを施して先に挙げたライバル車よりも高級感を演出するあたりはさすがトヨタ車だなぁ、と感じました。
室内の広さについてはインプレッサスポーツの2,670㎜、そしてアクセラスポーツ・シビックハッチバックの2,700㎜よりも短いホイールベース(2,640㎜)となるため、172㎝の私が運転席を調整した状態でニークリアランスが10㎝ほどと先に挙げたライバル車よりも狭く、先日登場したフォルクスワーゲン ポロと同じくらいの広さという印象です。
それに加えてスタイル優先のデザインによりガラスエリアは狭く、ピラーも結構視界の中に入る形状となっていることから、タイトな印象は強くなっています。なので3人以上でこのクルマに乗る機会が多い方は室内の広さの確認が必要になるのかな、と感じました。
(参考)C-HRのダッシュボード
シート
フロントシート
リヤシート
このクルマから新登場したスポーツシートは見た目の形状ほどタイトな印象はなく、大きさも十分で兄弟車のC-HRよりもほんの少しだけ柔らかいものの、なかなかしっかりとした掛け心地のシートとなります。
この掛け心地はシビックハッチバックやインプレッサスポーツ、そしてアクセラスポーツよりもイイのではないかと感じました。
生地については少し粗目のざっくりとした感触のファブリックとなり、大きな不満はないもののオプション設定の本革+ウルトラスウェードの生地を選択したくなりますね。
ただ、このオプションは175,500円と価格設定が高く、この価格ならシートヒーターだけでなくパワーシートもセットで装着してもらいたいですね。
(参考)トヨタ車では私が屈指の掛け心地を持つと感じるC-HRのフロントシート。本革+ファブリックの生地のクオリティも申し分なし
エンジン・トランスミッション
1200CC直噴ターボモデルは写真のCVTとFFモデルでは6速MTが選択でき、1800CCハイブリッドモデルは電気式無段変速のみの設定となる。
今回の試乗車は1200CC直列4気筒DOHC直噴ターボエンジン(116PS・18.9kgf・m)と10速マニュアルモード付CVTの組み合わせになります。
このクルマではドライブモードセレクトによりシフトレバー前のスイッチで「ECO」「NORMAL」「SPORT」(AVS装着車はこれに加え「COMFORT」と「SPORT+」)と選択できるようになっていますが、街乗りでは正直いって「SPORT」(または「SPORT+」)でやっとカタログ数値らしい加速力となり、アクセルの踏み加減と加速力がリンクする印象でした。
「NORMAL」モードでは走り始めがヌルッとした感じで発進するので信号の多い街中ではもたつく印象があり、信号の少ない郊外路でやっと使える印象です。「ECO」は使用しないほうがいいというか、使えないですね。
今回、海外仕様では新開発の2000CCエンジンないしは2000CCハイブリッドモデルが搭載されるようで、せっかく全てを一新して登場したのに「日本においてカローラに2000CCは大きい」との訳のわからない理由で日本仕様で搭載を見送られたのは本当に残念の一言です。
「カローラ」の変革をアピールするためにも新開発エンジンやCVTを搭載したモデルを最上級グレードとして設定し、その技術力の高さをもっとアピールすべきなのでは、と思ってしまいますね。
サスペンション・乗り心地
装着されていたタイヤは225/40R18 ダンロップSPORT MAXX 050
フロント ストラット式・リヤ ダブルウィッシュボーン式で構成されるサスペンションは、雑誌やネットのメディアでも紹介されているとおり、「乗り心地の良さ」がカローラスポーツの最大の美点かな、と思いました。
今回の試乗車ではオプションの電子制御可変減衰力調整ダンパーであるAVSが装着されていたので、3モードのうち真ん中の硬さ(NORMAL・SPORT)と最も硬いモード(SPORT+)を切り替えて試乗しましたが、私個人に合うのは1番硬いモードでした。この1番硬いモードの乗り心地は感じとしてはシビックハッチバックとシビックセダンの真ん中くらいの乗り心地ですね。
真ん中の硬さのモードは突き上げのない乗り心地にはなるものの、舗装状態の悪い道路を走行すると18インチタイヤの振動が抑えきれなくなることがあって、ちょっと気持ち悪いんですよね。
一番硬いモードでは舗装の悪い道路を走行すると突き上げは感じるけど18インチタイヤの振動が半分くらいになってフラット感が高くなるので、これが一番しっくりくるのかなと。ただ一般ウケは真ん中の硬さのモードになるのでしょうね。
今回は走行ルートが悪くてカーブを曲がる時の感じがよく掴めなかったのですが、個人的にはこのG“Z”グレードを購入するなら本革+ウルトラスウェードの生地や予防安全装備の充実を諦めてもAVSの装着は必須かな、と感じました。
総括
新型カローラスポーツは、TNGAシャシーの恩恵による乗り心地の良さとシートの掛け心地の良さは国内メーカーのライバル車と比較して勝っている印象があり、大変魅力的なクルマであると感じました。
惜しいなぁと感じるのはせっかく「カローラの変革」をアピールしようとしているのにもかかわらず、パワートレーンの設定に従来までのカローラの常識を当てはめているところがあって、開発陣の想いとメーカーの考え方に乖離を感じるところですね。
この実力ならば、今後登場するセダンやワゴンにも期待できそうですが、パワートレーンの設定に不安を感じますね。少なくとも今回試乗した1200CCターボエンジンは搭載してもらいたいと思います。
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