「車のローン」と呼ばれているものは、1種類ではありません。代金を誰が立て替えるかによって、契約の相手も、根拠になる法律も、毎月の支払先も変わります。そのうえで、総支払額のほうは借入額・年率・返済回数の3つだけで決まります。式が公開されているので、どの借り方でも同じ土俵に並べて比べられます。
先に、この記事の立場を書いておきます。特定の銀行やディーラーの金利は載せません。金利は商品ごとにも時期にも動くもので、当サイトが公表値として確認し続けられる形になっていないためです。代わりに、契約の型ごとに何が違うのかを条文で確かめ、総支払額は仮定を明示した計算例で示します。数字を写して覚えるより、自分の見積書で計算できるほうが役に立ちます。
読み終えたときには、見積書に並んでいる「支払回数」「分割払手数料」「支払総額」という欄が、それぞれ何を指しているのか分かるようになります。あわせて、完済したあとに残る名義変更の手続きと、その期限も確認します。ここを知らないまま完済すると、車を売るときに手続きが増えます。
車のローンは、代金を誰が立て替えるかで3つに分かれる
車を買うときの分割払いは、大きく次の3つに分かれます。違いは「間に誰が入るか」です。
1つ目は、銀行・信用金庫などからお金を借りて、そのお金で自分が車両代金を払う形です。契約は金銭の貸し借りなので、販売店との売買はその場で完結します。返済の相手は貸し手だけになります。
2つ目は、販売店を通して申し込む形です。割賦販売法第2条第4項は、個別信用購入あつせんを「カード等を利用することなく、特定の販売業者が行う購入者への商品の販売を条件として、当該商品の代金の全部又は一部に相当する金額の当該販売業者への交付をするとともに、当該購入者からあらかじめ定められた時期までに当該金額を受領すること」と定義しています。読むべきは「販売業者への交付」と「購入者から受領」の2つです。代金は業者から販売店へ渡り、購入者は販売店ではなく業者へ払います。
3つ目は、販売店そのものが分割払いを設定して売る形です。間に金融機関も信販会社も入らないため、支払う相手は売主である販売店になります。
条文で確認できる範囲を並べると、次のようになります。
| 項目 | 銀行・信用金庫などのマイカーローン | 販売店を通す個別信用購入あっせん | 販売店が自ら設定する分割払い |
|---|---|---|---|
| 契約の中身 | 金銭の貸し借り | 商品代金の立替払 | 商品を分割払いで売る売買 |
| 毎回の支払先 | 貸し手(銀行・信用金庫など) | あっせん業者(信販会社など) | 売主である販売店 |
| 販売店が代金を受け取る時期 | 購入者が支払った時点 | あっせん業者から交付を受けた時点 | 分割で受け取る |
| 記事で確認できた条文 | 利息制限法第1条(金銭を目的とする消費貸借) | 割賦販売法第2条第4項 | 割賦販売法第7条(政令で定める指定商品の場合) |
| 契約前の調査を定めた条文 | - | 割賦販売法第35条の3の3 | - |
表の「-」は、この記事の作成時点で対応する条文を確認できなかったことを示します。制度が存在しないという意味ではありません。
契約前に調査が入るのは、法律がそう定めているから
申し込むと審査があるのは、事業者の裁量ではなく法律の要求です。割賦販売法第35条の3の3は、個別信用購入あつせん業者に対し、契約を締結しようとする場合には年収、預貯金、信用購入あつせんに係る債務の支払の状況、借入れの状況その他の事項を調査しなければならないと定めています。同条は、調査に当たって指定信用情報機関が保有する特定信用情報を使用しなければならないとも定めています。
同条がいう個別支払可能見込額は、住宅などの資産を譲渡したり担保に供したりすることなく、生活維持費を使用せずに支払に充てることができると見込まれる1年間当たりの額として定義されています。生活費を削って払える額ではなく、生活費を残したうえで払える額を見る、という組み立てです。契約を締結したときは、調査に関する記録を作成して保存することも求められています。
ここから分かるのは、申込みの前に自分でできる準備があるということです。年収と借入れの状況は調査の対象として条文に書かれています。他の借入れを整理してから申し込む、購入額を下げる、頭金を用意するといった行動が意味を持つのは、この構造のためです。
上限の利率は法律で決まっている
利息制限法第1条は、金銭を目的とする消費貸借における利息の契約について、次の利率で計算した金額を超えるときはその超過部分について無効とすると定めています。
| 元本の額 | 条文の表記 | 同じ値を百分率で書いたもの |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 年二割 | 年20% |
| 10万円以上100万円未満 | 年一割八分 | 年18% |
| 100万円以上 | 年一割五分 | 年15% |
区分の境目が元本の額で決まることに注意してください。同じ販売価格でも、頭金を入れて借入額を100万円未満にすると、条文上の区分は変わります。
遅れたときの取り扱いも同じ法律にあります。第4条第1項は、債務の不履行による賠償額の予定について、その賠償額の元本に対する割合が第1条に規定する率の1.46倍を超えるときは超過部分を無効とし、第2項は違約金を賠償額の予定とみなすと定めています。
ただし、この条文が対象にしているのは条文どおり「金銭を目的とする消費貸借」です。販売店が代金を分割で受け取る形の手数料が、これと同じ枠で判断されるかどうかは契約の性質によるため、当サイトでは断定しません。だからこそ、比べるときは名前ではなく数字を見ます。契約書と見積書に書かれた実質年率と支払総額をそろえて並べれば、呼び方が違っても比較できます。
車検証の所有者欄は、完済まで自分ではないことがある
分割払いで買った車は、車検証の所有者欄が自分になっていないことがあります。割賦販売法第7条は、割賦販売の方法により販売された指定商品(耐久性を有するものとして政令で定めるものに限る)の所有権について、賦払金の全部の支払の義務が履行される時までは、割賦販売業者に留保されたものと推定すると定めています。所有権を売主側に残しておく扱いが、法律の中で想定されているわけです。
自動車の場合、所有者が誰かは登録制度で公に示されます。国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトは、登録対象自動車について「国の登録を受け、ナンバープレートを車体に取付け、封印を受けなければ運行の用に供することはできません」とし、移転登録を「所有者を変更する際に必要な手続」と説明しています。つまり完済しただけでは、車検証の所有者欄は変わりません。手続きをして初めて変わります。
期限もあります。道路運送車両法第13条第1項は、登録自動車について所有者の変更があったときは、新所有者はその事由があった日から15日以内に移転登録の申請をしなければならないと定めています。申請をせず、または虚偽の申請をした者は50万円以下の罰金とされています(第109条第1項第2号)。
必要な書類は、用意する人ごとに分かれています。
| 用意する人 | 書類(登録車の場合) |
|---|---|
| 旧所有者(所有権を持っていた側) | 譲渡証明書(実印を押印したもの)、印鑑登録証明書(発行後3か月以内)、代理人が申請する場合は委任状、車検証の住所・氏名または名称が印鑑登録証明書と異なる場合はつながりを確認できる証明書 |
| 新所有者(自分) | 印鑑登録証明書(発行後3か月以内)、代理人が申請する場合は委任状 |
| 共通 | 移転登録申請書(自動車検査証変更記録申請書)、手数料納付書(検査登録印紙を貼付)、自動車検査証、使用場所が変更される場合などは自動車保管場所証明書 |
旧所有者の書類は、こちらでは作れません。相手の会社に依頼して交付してもらう必要があります。手続きは管轄する運輸支局等への提出で行いますが、同ポータルサイトには自宅からインターネットで申請が可能である旨も案内されています。
総支払額は、借入額と年率と回数だけで決まる
ここからは金額の話です。毎回同じ額を返していく方式(元利均等返済)では、毎回の返済額は次の式で求まります。
毎回の返済額 = 借入額 × 月利 ÷ {1 -(1+月利)の-回数乗}、月利 = 年率 ÷ 12
総支払額は、この返済額に回数を掛けた額です。式に入る変数は3つしかありません。借入額、年率、回数です。逆にいえば、この3つがそろっていない見積書は比較できません。
方式そのものの性質は、金融広報中央委員会(知るぽると)が住宅ローンの解説の中で整理しています。元利均等返済のメリットは「返済額が一定額に決まり、返済計画が立てやすい点」であり、デメリットは「元金均等方式と比べて、元金部分の返済ペースが遅く、返済総額が増えること」とされています。元金均等返済については「元利均等方式よりも元金部分の返済ペースが早く、返済総額を抑えることができます」、デメリットは「当初の返済負担が大きいこと」とされています。自動車ローンでどちらの方式になるかは商品ごとに決まっているため、返済予定表で確かめてください。
次の計算例は、借入額200万円・60回(5年)・ボーナス払いなし・保証料や事務手数料を含めない、という仮定で計算したものです。実在する商品の金利ではありません。年率だけを変えて、総支払額のどこが動くかを見るためのものです。
年率を固定して回数を変えると、今度は別の動き方をします。次の表は、同じ200万円を年3.0%という仮定で計算したものです。
| 返済回数 | 毎回の返済額 | 総支払額 | 利息の合計 |
|---|---|---|---|
| 36回(3年) | 約58,200円 | 約209.4万円 | 約9.4万円 |
| 60回(5年) | 約35,900円 | 約215.6万円 | 約15.6万円 |
| 84回(7年) | 約26,400円 | 約222.0万円 | 約22.0万円 |
| 120回(10年) | 約19,300円 | 約231.7万円 | 約31.7万円 |
36回と120回では、毎回の返済額が約38,900円下がる一方で、利息の合計は約22.3万円増えます。回数を延ばすことは、毎月の負担を利息に置き換える取引です。どちらが良いかは、毎月いくらまでなら生活費を削らずに払えるかで決まります。第35条の3の3が生活維持費を使用せずに払える額を見ているのと、同じ考え方です。
なお、実際の契約では端数処理の関係で数円から数百円のずれが出ます。保証料や事務手数料が別に必要な商品では、その分も支払う額に加わります。比べるときは、金利の数字ではなく支払総額の欄で比べてください。
申し込む前に確かめる5つの数字
ここまでを、確認する順番に並べ直します。
- 借入額(車両価格から頭金と下取り額を引いた額)。利息制限法の区分の境目は元本の額で決まります
- 年率。実質年率として表示されているのか、分割払手数料として総額で表示されているのかを見ます
- 回数。回数を延ばすと毎回の負担は下がり、利息の合計は増えます
- 支払総額。式に入る3つがそろえば、呼び方の違う商品でも同じ土俵で比べられます
- 車検証の所有者欄に誰が記載されるか。完済後に移転登録が必要になるかどうかが、ここで決まります
このうち1から4は見積書と契約書に書かれています。5は契約の相手に確認する項目です。頭金をいくら入れるか迷ったときは、購入時と保有中に必要な費用をまとめた初めての車の予算はいくら?を先に読むと、月々に回せる額から逆算できます。
車を持ち続けるあいだの支出は、ローンの返済だけではありません。車検費用の内訳や自賠責保険と任意保険の違い、ガソリン代の計算方法で、返済と並行して出ていく費目を確かめておいてください。返済が残っている車を手放す場合は、所有者欄の書類が必要になるため、車を売るなら買取と下取りどっち?で手続きの担い手も確認できます。
金利の数字を1つ覚えるより、式と仮定を持っておくほうが長く使えます。見積書を受け取ったら、借入額・年率・回数の3つを取り出して、支払総額が自分の計算と合うかを確かめてみてください。合わなければ、保証料や手数料など、式に入っていない費用が含まれています。