年式と走行距離のどちらを重く見るべきか、という問いには、公表された基準で答えられる部分と、答えられない部分があります。答えられるのは2つです。年式は、これから納める税額が上がる年を確定させます。そして走行距離は、表示のしかたが規約で決まっていて、購入後に照合する手段まで用意されています。
答えられないのは「年式が1年古いといくら安くなるか」という部分です。価格の下がり方を示す公表値は、今回の調べでは見つかりませんでした。だからこの記事では相場の予想をしません。買取側の価格の考え方は車の買取相場にまとめてあります。
ここで扱うのは、価格ボードに並んでいる2つの数字から、読者が自分で確かめられる事実だけを引き出す方法です。根拠は自動車公正取引協議会の表示ルール、東京都主税局の課税の説明、国土交通省の点検と検査の記載に限っています。
年式と走行距離は、お店が自由に書いている数字ではない
中古車の店頭表示には、業界の自主ルールがあります。自動車公正取引協議会は、自動車公正競争規約の説明のなかで「店頭の展示車には、「販売価格」、「走行距離数」、「整備の実施」、「保証の有・無」、「修復歴の有無」等を表示すること。」としています。広告についても「新聞、チラシ、インターネット等の広告に販売価格を表示する場合は、店頭展示車と同様の事項の表示に加え、車台番号の下3桁以上を表示すること。」と書かれています。
同じページには、やってはいけないことも書かれています。「走行距離が実際のものよりも少ないものであるかのような表示や、修復歴があるにもかかわらず、修復歴がないかのような表示は行わないこと。」です。つまり、価格ボードの走行距離は「書いてもよい宣伝文句」ではなく、偽ると規約違反になる項目です。
必要表示事項のページでは、表示項目がもっと細かく並んでいます。今回確認できた11項目と、年式・走行距離に直接かかわる説明文を書き写すと次のようになります。
| 表示項目 | ページに書かれている説明 |
|---|---|
| 販売価格 | (項目名のみ確認) |
| 初度登録年月 | 「登録車は初度登録年月、軽自動車は初度検査年を表示しています。」 |
| 車名及び主な仕様区分 | (項目名のみ確認) |
| 定期点検整備の有無 | 「納車時までに定期点検整備を実施して販売する場合、「定期点検整備付き」と表示されています。」 |
| 保証の有無 | 「保証に要する費用が「車両価格」に含まれる場合は「保証付き」、それ以外の場合は「保証なし」と表示しています。」 |
| 走行記録数 | 「走行距離計の示すキロ数を表示しています。」 |
| 修復歴の有無 | 「車体の骨格に当たる部位の修正あるいは交換歴があると判断された場合に「有」と表示され、別途書面により修復箇所が表示されます。」 |
| 使用歴 | 「自家用、営業用、レンタカ−、その他の使用歴を表示しています。」 |
| 前使用者の点検整備記録簿の有無 | 「展示時点から遡り2年以内に定期点検整備が行われ、その点検整備記録簿が展示車両に備え付けられている場合に「有」と表示されています。」 |
| 自動車検査証の有効期限 | 「有効期限の年月日を表示しています。」 |
| 自動車リサイクル料金 | (項目名のみ確認) |
この表で押さえておきたいのは2点です。年式として表示されているのは「初度登録年月」であり、軽自動車では「初度検査年」であること。そして走行距離として表示されているのは「走行距離計の示すキロ数」であって、その車が実際に走った距離だと言い切っているわけではないことです。後者の差が、あとで出てくる「?」の記号につながります。
年式は、税額が上がる年を確定させる
初度登録年月が分かると、動かない予定が1つ決まります。経年による自動車税の重課です。
東京都主税局は、対象を「ディーゼル自動車…11年を超えるもの」「ガソリン自動車・LPG自動車…13年を超えるもの」と書き、重課の程度を「概ね15%(※バス・トラックは概ね10%の重課です。)」としています。あわせて、課税の基準日は「4月1日現在」です。燃料の種類で年数が違うところが見落としやすい点で、同じ年式でもディーゼル車のほうが2年早く区分に入ります。
年式が10年を超えている車を検討しているなら、重課の区分に入るのが何年後なのかは、その場で計算できます。排気量ごとの税額そのものは自動車税の年額で扱っています。
ここで1つ、確認できなかったことを書いておきます。新しい税率がいつ時点から適用されるのかという起算の細かい決まりは、今回当たった東京都主税局のページには書かれていませんでした。年数の区分と割合までが、確認できた範囲です。また、この年数と割合は東京都の記載であり、他の都道府県のページは見ていません。
走行距離は「走行距離計の示すキロ数」で、疑わしければ記号が付く
走行距離の側には、年式と違う仕組みがあります。数字が怪しいときに、そのことを表示させるルールです。
自動車公正取引協議会の品質表示のページは、該当する車両について次の表示を求めています。走行距離計が交換されている車は「走行距離計が交換されている旨及び交換前、交換後のキロ数」。走行距離数に疑義がある車は「走行距離数に疑義がある旨及び『?』の記号を表示」し、推定できる根拠があれば推定距離を、根拠がなければ「不明」と表示します。改ざんされていた車は「走行距離計が改ざんされている旨を表示」します。
| 表示されているもの | 規約で求められている内容 | 買う側が読み取れること |
|---|---|---|
| 距離の数字だけ | 走行距離計の示すキロ数を表示 | 交換も疑義も改ざんも確認されていない状態 |
| 交換の旨と2つの数字 | 交換前・交換後のキロ数を表示 | メーターが替わっており、合計で読む必要がある |
| 「?」の記号 | 疑義がある旨と記号、推定キロ数または「不明」 | 表示値を実走行として扱えない |
| 改ざんの旨 | 改ざんされている旨を表示 | 過去に巻き戻しが判明している |
同じページは、これらが口頭ではなく紙で渡されることも示しています。必要な事項が書面でフロントガラス等に表示され、購入者には同じ書面が交付され、販売店は「作成の日から2年間保存すること」とされています。見積書とは別に、この書面を受け取って読むところまでが確認の作業です。
実車では、センターピラーのシールを見る
紙だけでなく、車体にも痕跡が残る仕組みがあります。協議会のページによれば、走行距離計が交換または改ざんされた車には、公取協が作成したシールがセンターピラーの運転席側に貼付されます。交換歴車のシールには「交換前・後の走行キロ数」等が記入され、改ざん歴車のシールには「改ざんの判明した月日」が記入されます。
運転席のドアを開けたときに目に入る位置です。価格ボードを読んだあと、現車を見る段で確認できる数少ない項目なので、距離の表示に交換や疑義の記載があった車では必ず開けて見ておきます。
購入後に照合する手段と、その限界
表示や書面は、販売する側が示すものです。それとは別に、買う側が後から照合できる仕組みが用意されています。
走行メーター管理システムは、日本オートオークション協議会が運営し、「オートオークション会場に出品された中古車の走行距離のデータを蓄積し、データベースとして集中管理」して、「蓄積されたデータに照らして走行距離に異常があるかどうかをチェック」するものです。購入済みの中古車については、一般財団法人日本自動車査定協会の支所、または一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会の支所の窓口で確認でき、手数料は1,500円、「確認のため、現車を持ち込む必要があります。」とされています。
限界も同じページに明記されています。システムに走行距離データが存在しない車両、たとえばオートオークションへの出品歴がない車については確認できません。個人売買で流れてきた車や、同じ販売店の中だけで下取りから販売まで完結した車は、照合の対象にならない可能性があります。
走行距離が制度に効くことを確認できたのは、点検の省略条件
走行距離の多さが整備に効くという話は、よく語られます。ただ、公表された基準として今回確認できたのは1か所だけでした。定期点検の省略条件です。
国土交通省の「点検整備の種類」は、定期点検整備を「定期的に行う必要のある点検」として、マイカー(自家用乗用車、軽自動車)は1年ごとに29項目、2年ごとに60項目としています。そのうえで、点検を省略できる条件を「走行距離が規定以下(マイカーは年間5千キロ、事業用自動車は3ヶ月間当たり2千キロ等)で、前回の点検を行っている場合に限り、点検を行わないことができる項目数」と説明しています。
読み方には注意が要ります。省略できるのは「走行距離が規定以下」かつ「前回の点検を行っている」という2つを満たした場合だけです。走行距離が少ないという一点では条件を満たしません。逆に言えば、距離の少ない車を選んだときには、前回の点検が行われていたかどうかを確かめる意味が出てきます。価格ボードの「前使用者の点検整備記録簿の有無」が「有」になっているか、記録簿が車に積まれているかを見る場面がここです。点検そのものの区分は日常点検と定期点検で扱っています。
なお、省略できる項目の数そのものは、同ページの表で今回読み取れなかったため書きません。確認できたのは、省略という扱いが走行距離を条件にしている、という構造までです。
車検証から読めること、読めないこと
買ったあとに手元に残る書類は、車検証です。ここは2023年から形が変わっています。電子車検証特設サイトは「2023年1月4日から、自動車検査証が電子化されました」としたうえで、「必要最小限の記載事項を除き自動車検査証情報はICタグに記録します」と書いています。券面には有効期間や使用者住所、所有者情報が記載されません。
代わりに渡されるのが「自動車検査証記録事項」です。同サイトのよくあるご質問は、これを「電子車検証のICタグに記録され、券面で確認できない事項を容易に確認できるよう…補助的にお渡ししている書面」と説明し、「車検証のように車両運行時に自動車に備え付ける義務はありません。」としています。車検証閲覧アプリのページでは、この記録事項を「閲覧アプリからPDF形式で出力することができます」とし、「「自動車検査証記録事項」にはICタグの内容も含めたすべての車検証情報が記載されます。」と書かれています。
ここで1つ、確認できなかったことがあります。走行距離がこの記録事項のどこに、どの項目名で記録されるのかを、今回当たった公式サイトのHTMLのページでは確認できませんでした。車検証閲覧アプリのページに走行距離の項目名はなく、よくあるご質問にも走行距離を単独で扱った問答はありませんでした。自分の車の記録事項を実際に開いて確かめるのが確実です。
有効期間そのものは、継続検査のたびに更新されます。国土交通省の検査概要は継続検査を「自動車検査証の有効期限が満了した後も引き続きその自動車を使用するときに受ける検査」と定義しています。中古車を買う時点では、価格ボードの「自動車検査証の有効期限」が、次に費用が出る日付です。車検の受け方は車検はいつ・どこで受けるかで扱っています。
「古いが距離が少ない車」と「新しいが距離が多い車」
ここまでの材料で、冒頭の問いに公表値の範囲で答えられます。2つの車を比べるとき、確かめる項目そのものが入れ替わります。
年式が古い側では、重課の区分までの年数と、前回の点検が行われていたかどうかが効きます。走行距離が多い側では、表示区分に交換や疑義の記載がないか、オートオークションの出品歴があって照合できる車かどうかが効きます。どちらが良いかという一般の答えはなく、確かめる項目が違うだけです。
売る側から見た年式の話は車を売るのに適した年式で、査定でどこを見られるかは車の査定の基本で扱っています。
今回確認できなかったこと
この記事に入れなかった項目を、理由とあわせて残します。
| 調べたこと | 今回の結果 |
|---|---|
| 年式・走行距離による価格の下がり方 | 公表している一次情報を確認できなかったため書かない |
| 査定基準における走行距離の加減点 | 日本自動車査定協会のサイトは証明書のホスト名が一致せず取得できなかった |
| 「過走行」と呼ぶ距離の基準 | 公的機関・業界団体の記載を確認できなかった |
| 乗用車の平均車齢・平均使用年数の最新値 | 自動車検査登録情報協会の公表資料がPDFのみで、本文を読み取れなかった |
| 自動車重量税の経年区分の税額 | 国土交通省の資料がPDFで、現行の金額を読み取れなかった |
| 点検を省略できる項目の数 | 国土交通省のページの表から数値を読み取れなかった |
数字を1つも足さずにこの表を残したのは、「確認できなかった」と「存在しない」は違うからです。上の6つは、どこかに記載がある可能性が十分にあります。今回の取得で確認できなかった、という意味です。
結論:2つの数字は、価格の目安ではなく確認の入口
年式と走行距離は、値段を当てるための数字としては使えません。相場を示す公表値が見つからないからです。しかし、確認の入口としては、この2つがいちばん具体的です。
年式が分かれば、ディーゼル車なら11年超、ガソリン車・LPG車なら13年超という自動車税の区分に、あと何年で入るのかが決まります。走行距離が分かれば、その数字に「?」や交換歴の記載が付いていないか、センターピラーにシールがないか、購入後に1,500円と現車の持ち込みで照合できる車かどうかを、順番に確かめられます。
価格ボードの前で読者ができることは、3つに絞れます。初度登録年月から重課の年を数える。走行記録数の横に記号や注記がないかを見る。そして、交付される書面と前使用者の点検整備記録簿を受け取って読む。どれも、誰の意見にも依存しない確認です。