カーリースを検討していて、買った場合と比べて何ができなくなるのかを確かめに来た方へ書いています。
先に答えを書きます。カーリースで売ること、改造すること、距離を気にせず走ることに制約が付くのは、車検証の所有者欄に自分の名前が入らないからです。国民生活センターは、カーリースについて車の所有者はリース会社であり消費者ではないと説明しています。所有者が別にいる状態で車を使うという一点から、この記事で挙げる制約のほとんどが出てきます。
もう一つ、先に書いておきたいことがあります。できないことの大半は、法律が禁じているのではなく契約が定めています。だから「カーリースなら一律にこうなる」という形では書けません。確かめる場所は法令集ではなく、自分が結ぶ契約書と、その事業者が公式ページに書いている扱いです。
この記事では、制約の出どころを法令・契約の条項・商品ごとの設定の3つに分け、それぞれどこを読めば自分の契約について確認できるのかを並べます。使うのは、公益社団法人リース事業協会が公開している契約書の条項例、国土交通省が案内する登録と検査の手続き、国民生活センターの資料、事業者が公式ページに書いている扱いだけです。金額は書きません。リース料にも解約金にも公表された標準額がないためです。支払う金額を同じ土俵に載せる手順はカーリースと購入の比較に、借りるという契約そのものの性質はカーリースとはに分けて書きました。
「できない」は、法令か契約か商品のどれかから来ている
制約の一覧を眺める前に、出どころで仕分けておきます。ここを混ぜると、買った車でも通る手続きを「リースだからできないこと」と受け取ってしまいます。
1段目の法令と公的な手続きは、誰が車を持っていても同じように働きます。改造で車検証の記載事項が変わるなら検査が要り、名義を動かすなら移転登録が要る、という話は購入でも生じます。
2段目のリース契約の条項が、リース特有の部分です。リース事業協会は、リース契約書の主な条項として「リース会社は、リース会社が物件の所有権を有する旨の標識を貼付します。ユーザーは、リース会社の所有権を侵害する行為をしません」という定めを公開しています。所有権を侵害しない、という抽象的な一文が、売る・担保に入れる・勝手に手を加えるといった行為の線引きの根っこになります。
3段目は商品ごとの設定です。走行距離の上限や、装備品の追加をどこまで認めるかは、法令にも協会の条項例にも書かれていません。同じ「カーリース」という言葉でも、ここは会社ごとに違います。だから一般論を読むより、契約しようとしている会社の公式ページを読むほうが早く確実です。
所有者欄が自分でないと、手放す判断を自分だけでは決められない
いちばん大きい違いはここです。買った車は自分の資産なので、売る時期も相手も自分で決められます。カーリースではそれができません。理由は所有者欄にあります。
出光カーリースは公式FAQで、車検証上の「使用者」が客、「所有者」は提携リース会社である住友三井オートサービスになると記載しています。使用者の欄に自分の名前が入るので車は自分のものだと感じやすいのですが、登録上の所有者は別にいます。
| 確かめたいこと | 現金で買う | ローンで買い、売主が所有権を留保している場合 | カーリース |
|---|---|---|---|
| 車検証の所有者欄 | 自分 | 売主(東京都主税局が所有権留保の場合の扱いを記載) | リース会社(出光カーリースは提携リース会社名を公式FAQに記載) |
| 自分だけで売却・名義変更ができるか | できる。移転登録の書類を自分で用意する | 旧所有者側の書類が要るため、自分だけでは完結しない | 同じく所有者側の書類が要る。協会の条項例は所有権を侵害する行為をしないと定める |
| 自動車税種別割の納税義務者 | 4月1日現在の所有者である自分 | 使用者として車検証に登録されている方(東京都主税局) | 所有者であるリース会社。税金は月々のリース代金に含まれると国民生活センターが記載 |
| 改造の制限 | 構造等変更検査などの法令上の手続きの範囲 | 同じ。契約側の定めは公的資料では確認できませんでした | 法令上の手続きに加えて、契約と商品ごとの定めが重なる |
| 走行距離の上限 | 上限を定める記載は確認できませんでした | 上限を定める記載は確認できませんでした | 多くの場合、走行距離等の利用に関する制約があると国民生活センターが記載 |
| 終わるときの扱い | 売る・下取りに出すを自分で決める | 同じ判断をするには所有者側の書類が必要 | 原状回復したうえでリース会社指定の場所へ返還(協会の条項例 L第23条) |
表の2列目と3列目が似た形になっているのが要点です。自分だけで名義を動かせるかどうかは、リースか購入かではなく、所有者欄に誰が入っているかで決まります。ローンで買った車も、売主が所有権を留保している期間は同じ不自由さを持ちます。残価を据え置く買い方との違いは残価設定ローンとカーリースに分けて書きました。
国土交通省が案内している移転登録の提出書類は、新所有者の印鑑証明書、旧所有者の印鑑証明書、譲渡人が実印を押印した譲渡証明書、自動車検査証、自動車検査登録印紙を貼付した手数料納付書などです。印鑑証明書は発行から3か月以内のものと案内されています。このうち旧所有者の分は、所有者でなければ用意できません。だからリース車を自分の名義にするにも、手元の車を売るにも、リース会社がその書類を出す契約になっているかどうかが先に来ます。買った車を売るときにそろえるものは車の売却に必要な書類にまとめました。
協会の条項例は、契約が終わったときの扱いを「リース期間の満了または解除により契約が終了したとき、ユーザーは、ユーザーの責任と負担でリース期間中に生じた物件の損傷を原状回復したうえで、リース会社指定の場所に物件を返還します」と定めています。返すことが前提として書かれている契約なので、満了時に自分のものになるかどうかは別に定めがあるかどうかの問題です。満了が近い方はカーリースの契約満了後を見てください。
改造は、買った車でも無制限ではない
カーリースではカスタマイズができない、という説明は広く見かけます。ただ、比べる相手である購入側も自由ではありません。先にそこを確認しておきます。
国土交通省は、車両の長さ、幅、高さ、乗車定員、最大積載量、車体の形状、原動機の型式、燃料の種類、用途等に変更を生ずるような改造をしたときは、使用者が使用の本拠の位置を管轄する運輸支局等に自動車を提示して構造等変更検査を受けなければならないと案内しています。部品の取り付けが一定の範囲に収まる場合は手続きが簡素化されるという案内もあります。買った車でも、記載事項が変わる改造には検査が付いてきます。
そのうえでリース側には、契約の定めが重なります。協会の条項例が返還時の原状回復を定めているため、戻せない変更は返すときの負担として残ります。具体的な線引きは事業者が公式ページに書いています。
出光カーリースは、ドリンクホルダーやスマートフォンの充電器、アルミホイールなど車体の改造を伴わないカー用品については客が購入した場合と同様に付けてよいとしたうえで、車体の改造や車検証記載事項の変更を伴うような改造、法令違反となる部用品の取付けはできないと記載しています。コスモMyカーリースは、車の改造は遠慮してもらっているとしながら、返却時に原状回復が可能な範囲で装備品の追加等をするのは問題ないと記載しています。
同じことを書いているように見えて、2社の文面はそろっていません。片方は認める用品の例を挙げ、片方は原状回復できるかどうかで線を引いています。「カーリースは改造できない」とひとまとめに覚えても、自分の契約の答えにはなりません。読むのは、契約しようとしている会社の記載です。
走行距離と使い方の制約は、商品ごとに決まる
国民生活センターは、カーリースには多くの場合、走行距離等の利用に関する制約があると書いています。「多くの場合」という書き方になっているのは、制約の有無と中身が商品ごとに違うからです。
出光カーリースの公式FAQでは、新車の場合に月間の予定走行距離の上限があり、中古車の場合は走行距離に制限はないと記載されています。同じFAQには、走行距離超過による距離精算はないものの、契約終了時に走行距離の超過により査定額が残価に満たない場合は差額を支払うことになる、という説明もあります。
ここから分かるのは、距離の制約は一種類ではないということです。超えた分を単価で精算する形、精算はせず返却時の査定で効く形、そもそも上限を置かない形が、同じ業界の中に並んでいます。「何キロまで走れるか」ではなく、「超えたときに何が起きる契約なのか」を読む必要があります。
買った車の側に、走行距離の上限を定める記載は見当たりませんでした。もっとも、乗った分が車の状態に反映されることは変わりません。違うのは、買った車では距離が精算や査定の条項として契約に書かれていない、という点です。
傷・故障・事故の負担は、条項ごとに分かれて書かれている
ここまでは手放すときと使い方の話でした。最後に、乗っている間の負担について、協会が公開している条項例を読む場所として並べておきます。契約書の条項番号は会社ごとに違いますが、探すべき見出しは同じです。
| 確かめたいこと | 協会の条項例での定め |
|---|---|
| 修理代は誰が払うのか | ユーザーが物件の保守、点検、整備を行い、損傷したときはユーザーが費用を負担して修繕する(L第4条) |
| 保険はどうなっているか | リース会社が物件に保険をつけ、保険事故が発生してユーザーが修繕したときは保険金をユーザーに支払う(L第15条) |
| 車に不具合があったときの請求先 | リース会社は品質等の不適合の責任を負わず、ユーザーは売主に直接請求する(L第16条) |
| 事故で乗れなくなったらリース料は止まるか | 引渡しから返還までに滅失・損傷等した場合、原因のいかんを問わずリース料の支払いを拒めない(L第18条) |
| 支払いを滞らせたらどうなるか | リース会社は契約を解除でき、ユーザーは物件を返還して規定損害金を支払う(L第20条) |
| 期間が終わっても使い続けたいとき | 満了前に協議して、同一物件について新たなリース契約をすることができる(L第22条) |
いちばん意外に読まれるのはL第18条です。事故や災害で車が使えなくなっても、それを理由にリース料の支払いを拒んだり損害賠償を求めたりはできないという形が、条項例として示されています。買った車なら、使えなくなった時点で以後の支出は自分の判断で止められます。ここは、所有しているかどうかが支出の止め方に直結する場面です。
L第16条も購入と形が違います。買った車の不具合は販売店へ言いますが、リースでは契約の相手がリース会社で、不具合の請求先は売主という分かれ方になります。協会の説明では、リース会社は売主に対する買主としての請求権をユーザーに譲渡する手続をとるなど、ユーザーの直接請求に協力するとされています。
なお、途中でやめること自体については、国民生活センターが原則として中途解約ができず、解約できる場合でも解約料等が生じると書いています。この点はカーリースの中途解約に分けてまとめました。
自分の契約で確かめる順序
ここまでを、手を動かす順に並べます。一般論の一覧ではなく、自分の契約についての答えを作る作業です。
- 車検証の所有者欄を見ます。リース車でなくても、ローンで買った車なら売主の名前が入っていることがあります。ここが出発点です
- 契約書の中から、所有権についての条項を探します。協会の条項例でいえばL第8条・L第9条に当たる部分で、売る・担保に入れる・手を加えるの線引きの根拠になります
- 走行距離の定めを探します。上限の有無だけでなく、超えたときに精算するのか、返却時の査定で見るのかまで読みます
- 用品の取り付けと改造についての記載を、契約書と事業者の公式ページの両方で探します。片方にしか書かれていないことがあります
- 満了時と中途解約の条項を読みます。車を受け取れる定めがあるかどうかは、ここにしか書かれていません
- 読んで分からなかった項目を書き出し、契約前に事業者へ問い合わせます
国民生活センターは、カーリースの仕組みを理解して自身の利用方法に合っているかをよく検討すること、契約書の内容をしっかり確認し、不明な点があれば必ず契約前に事業者へ確認することを呼びかけています。この記事で挙げた制約も、最後は自分の契約書で確かめる対象です。
カーリースでできないことを並べ終えて残るのは、制約の多さそのものよりも、その制約がどこに書かれているかという感覚です。法令から来るものは買っても同じで、調べれば公的なページに載っています。契約から来るものは、自分が署名する紙に書かれています。商品から来るものは、その会社の公式ページにあります。3つの置き場所を分けて読めば、他人の記事の一覧に頼らずに、自分の条件で判断できます。