販売店で「月々の負担を抑えるなら、残価設定型のクレジットかカーリースです」と並べて勧められることがあります。どちらも月額が小さく、説明を聞いた限りでは違いが分からない。そこで比べに来た方へ書いています。
先に答えを書きます。この2つは、月額が小さくなる理由こそ同じですが、契約の型そのものが違います。残価設定ローンは車を買う契約で、カーリースは車を借りる契約です。型が違うので、車検証に載る名義、自動車税を誰が納めるか、期間の途中でやめたくなったときに何ができるかが変わります。そして月額の数字を見比べても、この4つはひとつも見えません。
この記事では、国民生活センターの注意喚起、東京都主税局の課税の説明、国土交通省の登録手続きの案内、そして各社が公式ページに公表している条件だけを使って、その4点を並べます。金額の目安は書きません。残価も分割払手数料もリース料も個別に決まるもので、両者を代表する公表値が存在しないためです。借りるという契約そのものの性質はカーリースとはに、分割払いの仕組みそのものは自動車ローンの金利と総支払額に分けて書いています。
月額が小さく見える理由は、どちらも同じ
最初に、共通しているところを片付けます。ここが同じだから、説明を聞いても区別が付きません。
Hondaは残価設定型クレジットについて、一定額を最終回の支払いに据え置くので、月々の負担が少なくなり、気軽に新車に乗ることができると説明しています。一方、国民生活センターはカーリースについて、リース料は基本的に車の価格から契約期間終了時に想定される車の残存価値(残価)を差し引くことで計算されると説明しています。どちらも、期間が終わったときに残るであろう価値を先に抜いて、残った分だけを月数で割っています。
つまり月額の小ささは、どちらの商品でも「支払いを免除された」ことを意味しません。抜いた残価の分は、契約の終わりに必ず出てきます。返すのか、買い取るのか、乗り換えるのか。その出てき方が、契約の型によって変わります。
なお、リースという契約の分類そのものは、公益社団法人リース事業協会が整理しています。同協会はファイナンス・リースを「中途解約不能でフルペイアウトのリースをいいます。」と定義し、オペレーティング・リースを「ファイナンス・リース以外のリースをいいます。」と定義しています。個人向けのカーリースがどちらに当たるかは商品ごとに違うため、この記事では分類で断定せず、各社が公表している条件の方を見ます。
違い1:車検証に載る名義が違う
最初の分かれ目は、車検証に誰の名前が載るかです。
カーリースについては、国民生活センターが明快に書いています。カーリースは「リース会社が所有する車を一定の期間借りて利用できるサービス」で、車の所有者はリース会社になります。借りている以上、所有者は貸している側です。
残価設定ローンの側は、買う契約です。ただし、代金を分割で払っている間、売主が所有権を残す扱いが広く使われています。東京都主税局は自動車税種別割の説明の中で、割賦販売等で売主が自動車の所有権を留保している場合という書き方をしており、この扱いが実際に行われていることを前提にしています。このとき車検証には、所有者として販売会社やクレジット会社が、使用者として契約した本人が載ります。
結果として、どちらの契約でも、契約している当人は「使用者」の側に置かれます。ここが、残価設定ローンを「買ったのだから自分の車だ」と理解していると食い違うところです。買う契約であることは確かですが、代金を払い終えるまでは名義の上で自分の車になっていない、という状態が続きます。
国民生活センターに寄せられた相談にも、ローン契約と同様だと説明されて契約したところ、実際には走行距離の制限や中途解約料の条件が付いたカーリース契約だった、という事例があります。説明の言葉ではなく、契約書と車検証の名義で確かめてください。購入という選択肢との比較そのものはカーリースと購入の比較にまとめています。
違い2:自動車税を誰が納めるかが変わる
名義が決まると、税を納める人も決まります。ここは、どちらを選ぶかで実際に手元の作業が変わる項目です。
東京都主税局は、自動車税種別割について、4月1日現在、自動車の所有者として自動車検査証(車検証)に登録された方に1年分が課税されるとしたうえで、割賦販売等で売主が自動車の所有権を留保している場合は使用者が納税義務者になると説明しています。残価設定ローンで所有権が留保されているなら、納税通知は使用者である自分に来ます。毎年その支払いを自分で用意することになります。
カーリースはこの但し書きに当たりません。所有者はリース会社であり、賦課期日に所有者として車検証に登録されているのもリース会社です。では利用者がまったく負担しないのかというと、そうではなく、月額に織り込んで案内している会社があります。定額カルモくんは、月額料金に車両本体価格・自動車税・重量税・自賠責保険料・登録費用・車庫証明手続代行費用・仲介手数料・陸送費が含まれると記載しています(車検点検料や交換部品代は含まれないと明記されています)。
見落としやすいのは、ここで比べているのは「支払う/支払わない」ではなく「別に払う/月額に織り込まれている」の違いだという点です。カーリースを選んでも税負担が消えるわけではありません。逆に残価設定ローンの月額が小さく見えるときは、その月額に自動車税や自賠責保険料が入っていない可能性を確かめてください。排気量ごとの税額そのものは自動車税の年額にまとめています。
違い3:走る距離と車の状態に条件が付く(どちらにも付く)
「距離の制限はカーリースだけの弱点」と受け取られがちですが、これは正確ではありません。残価を先に差し引いた商品である以上、返すときの価値を守るための条件は、残価設定ローンの側にも付きます。
Hondaは残価設定型クレジットの返却時の条件として、月間走行距離1,000km以下を挙げ、1,500kmも選べるものの、その際は最終回の支払金額が変動すると記載しています。内外装については、減点が100点以内であることを条件とし、超えた場合は減点1点につき1,000円の負担が生じるとしています。走行距離を超えた場合の単価は車種ごとに決められており、N-BOXなどが5円/km、フィットやヴェゼルなどが6円/km、ステップワゴンやシビックなどが7円/km、CR-Vやアコードなどが8円/km、Honda eが10円/kmと公表されています。支払回数は36回(3年)・48回(4年)・60回(5年)から選ぶ形です。
カーリース側では、定額カルモくんが、契約期間6年以下の場合に走行距離は月間平均1,500kmを上限とし、超過分は1キロあたり8円の追加請求になると記載しています。7年以上で契約した場合は走行距離に制限はないとしています。
この2つを見比べて分かるのは、上限の数字だけを取り出して比べても意味がないということです。Hondaの1,000kmは返却時に最終回の支払いを不要にするための条件で、カルモくんの1,500kmは契約年数によって外れる上限です。条件の意味も、超えたときに請求される単価も違います。比べるべきなのは会社どうしではなく、自分が月に何km走るかという1つの数字と、目の前の契約の条件です。自分の数字の出し方はカーリースの選び方にまとめました。
違い4:期間の途中でやめたくなったとき
4つめは、契約を最後まで続けられなかったときの話です。転勤、家族構成の変化、免許の返納など、数年先を完全に読める人はいません。
カーリースについては、国民生活センターが特徴として、原則として中途解約ができないこと、解約できる場合でも解約料等が生じることを挙げています。定額カルモくんも、よくあるご質問で「契約後の解約はできません。」と明記しています。解約料の決まり方や、事由を限って解約を認めている商品についてはカーリースの中途解約に分けて書きました。
残価設定ローンについては、今回確認したHondaのページに書かれているのは満了時の選択肢だけでした。乗り換える(車両を返却する)か、乗り続ける(一括払いまたは再クレジット)か、の2つです。期間の途中で手放す場合にどうなるかは、確認したページに記載がありませんでした。ここは推測で埋めず、契約書と販売会社への確認に回してください。
そのうえで、どちらにも共通する制約が1つあります。車検証の所有者が自分でない間は、名義を自分へ移す手続きを単独では進められません。国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトによると、名義を変更する場合には移転登録または変更記録の手続が必要で、申請先は使用の本拠の位置を管轄する運輸支局等です。必要書類として、譲渡人が実印を押した譲渡証明書と、発行されてから3ヶ月以内の印鑑(登録)証明書が挙げられています。この書類は、所有者として登録されている側が用意するものです。売るにせよ乗り続けるにせよ、相手方の手続きを待つ期間が挟まります。売却の段取りそのものは車の買い替えは売却と下取りのどちらかで扱っています。
満了時に選べることを並べる
契約の終わりに何ができるかは、それぞれの会社が公表しています。金額ではなく、選択肢の有無だけを並べます。
| 満了時にできること | 残価設定ローン(Hondaの記載) | カーリース(各社の記載) |
|---|---|---|
| 返して終わりにする | 「乗り換える」=車両を返却する。条件を満たさない場合は負担が生じる | コスモMyカーリースは満了時の選択肢に「返却」を挙げている |
| 同じ車に乗り続ける | 「乗り続ける」=一括払いまたは再クレジット | コスモMyカーリースは「再リース」「買取り」を挙げている |
| 別の新しい車に替える | 乗り換え時に車両を返却する | コスモMyカーリースは「乗換え」を挙げている |
| そのまま自分のものにする | 一括払いまたは再クレジットで買い上げる | 定額カルモくんは「もらえるオプション」加入で無償譲渡の選択が可能と記載 |
| 条件を満たさなかったとき | 減点100点超は1点につき1,000円、距離超過は5〜10円/km(車種別) | 定額カルモくんは距離超過分を1キロあたり8円と記載 |
表を見ると、選択肢の並びそのものはよく似ています。似ているからこそ、違いは「その選択肢に何を満たせばたどり着けるか」の側に寄っています。残価設定ローンで乗り続けるには据え置いた残価を払う必要があり、カーリースで自分のものにするにはオプションへの加入や契約年数の条件が付きます。コスモMyカーリースは、契約内容により選択肢が異なる場合があるとの断りも付けています。
なお当サイトは、事業者の料金データを独自に収集・検証していません。そのため、どちらが安いか、どの会社がおすすめかという順位は作りません。各社の条件を横に並べた一覧はカーリースの比較にあります。
自分の条件に置き換えて確かめる
ここまでの4点を、契約前に自分で確かめられる形にまとめます。
| 確かめること | 見る場所 | 決まると何が分かるか |
|---|---|---|
| 車検証の所有者欄に誰が載るか | 契約書の記載、見積書の名義の欄 | 名義を動かすときに誰の書類が要るかが決まる |
| 自動車税種別割を誰が納めるか | 月額に含まれる費目の一覧、納税通知の送り先 | 毎年その時期に自分で用意する支出かどうかが決まる |
| 月に何km走るか | 走行距離計の表示値と日付から月あたりに直す | 距離の上限と超過単価のどちらが自分に効くかが決まる |
| 期間の途中でやめられるか | 中途解約の条項、解約できる事由と免責期間 | 長い期間を選んでよいかどうかが決まる |
| 満了時にどうしたいか | 満了時の選択肢と、譲渡・買取りの条件 | 逆算して契約年数の下限が決まる |
順番としては、3行目の走行距離を先に出すのが早いです。この1つの数字が決まると、残価設定ローンとカーリースのどちらでも、読むべき条項が同じ場所に定まります。距離の条件が自分の実績に対して余裕のあるものかどうかは、商品の種類ではなく個別の契約で決まるためです。
そのうえで、期間の途中でやめる可能性が読めない場合は、やめ方について公表された記載が多い側から候補を絞るのが手堅い進め方になります。今回の範囲では、カーリース側には中途解約の可否についての記載があり、残価設定ローン側には満了時の記載しか見つかりませんでした。記載が無いことは「できない」という意味ではありませんが、契約前に確かめる項目であることは確かです。
確認できなかったこと
この記事で埋められなかった項目を残します。
残価設定ローンの分割払手数料(金利)の水準と、カーリースのリース料の水準は書いていません。どちらも商品・車種・時期・審査の結果で決まり、両者を代表する公表値がないためです。総支払額を自分で計算する式は自動車ローンの金利と総支払額に置いています。
残価設定ローンで期間の途中に車を手放す場合の扱いは、今回確認したHondaのページに記載がありませんでした。他社の商品にも同じ扱いがあるかどうかは確認していません。
今回の比較で挙げた各社の条件は、Honda、定額カルモくん、コスモMyカーリースの公式ページで2026-09-18に確認できたものだけです。ここに載せていない会社や商品が、同じ条件だという意味ではありません。また、走行距離の上限、超過時の単価、満了時の選択肢は改定されることがあります。
車検証の名義と納税義務者の関係は、東京都主税局の説明にもとづいています。自動車税種別割は都道府県の税のため、手続きの細部はお住まいの自治体の案内で確かめてください。
この記事のまとめ
残価設定ローンとカーリースは、月額が小さくなる理由が同じです。どちらも車両の価格から残価を差し引き、残りを期間で割っています。違いが出るのは、そこから先の契約の型です。
残価設定ローンは買う契約で、代金を払い終えるまで売主が所有権を留保する扱いがあります。このとき自動車税種別割の納税義務者は、使用者として車検証に登録されている自分です。カーリースは借りる契約で、所有者はリース会社です。月額に自動車税を含むと記載している会社があります。
走行距離と車の状態の条件は、どちらにも付きます。上限の数字だけを会社どうしで比べても判断できないため、自分が月に何km走るかを先に出して、目の前の契約の条件と突き合わせてください。期間の途中でやめる可能性が読めないなら、その扱いが公表されているかどうかを確かめてから年数を決めます。
どちらを選んでも、名義を自分へ移すには所有者側の譲渡証明書と印鑑(登録)証明書が要ります。契約前に、車検証の名義、納税義務者、走行距離の条件、途中でやめる条件、満了時の選択肢の5つを契約書で確かめてください。この記事の記載は2026-09-18に各一次情報で確認したものです。